2019年5月
千葉県銚子市 JAちばみどり 銚子施設園芸組合(トマト)
代表生産者 萩谷 久雄さん
産地だより 2019年5月
今月の産地だよりは、冬暖かく、夏涼しい、恵まれた気候条件の千葉県銚子市でトマトを栽培している協力農家さん、萩谷さんをご紹介させていただきます。
銚子のご紹介
銚子市は、三方を水に囲まれ、利根川河口から君ケ浜、犬吠埼、屏風ケ浦に至る海岸線は、砂浜あり、岬あり、断崖絶壁ありと、変化に富んだ雄大な景観美を織りなしています。また、2018年度の水揚げ高、約25万トンを誇り、8年連続で日本一の水揚げ量を誇る銚子漁港を有しています。沖を流れる暖流・寒流の影響を受け「夏涼しく、冬暖かい」気候を活かして、大根、キャベツ、トマト、メロンなどの農業、歴史と伝統を実感できる醤油工場など、多くの地域資源に恵まれた魅力あふれるまちです。銚子には1年中海から吹く風の力を求めて30基以上の風力発電の風車が稼働しているそうで、キャベツ、大根などの畑が広がる風景の中に溶け込んでいます。
銚子施設園芸組合のトマト
まずは、JAちばみどり職員の河野さんより産地の全体像をうかがいました。
「銚子の野菜といえば、キャベツ、大根が有名ですが、銚子にはトマトもある!ということを多くの皆さんに知ってほしいです!」と、力強く語っていただきました。
銚子施設園芸組合は、生産者110名、約50haの作付面積にて、年間でおよそ85万ケース(約3,400トン)ものトマトを生産しています。
5~7月まで収穫する春作。9~12月まで収穫する抑制作。1~7月まで収穫する越冬作。と3つの作型に分けて、ほぼ1年間を通じてトマトを出荷しているグループです。
海風に守られて、冬暖かく、夏涼しい環境で、東京が35℃の酷暑の時に、銚子は28℃くらいということも多く、野菜を育てるには最適な気候と言えます。
畑は、関東ローム層の火山灰土が主体でミネラルが豊富なので、肥料をそんなにたくさん入れなくてもいい野菜が出来る環境です。また、海から吹いてくる潮風にも、ほぼよいミネラル分が含まれており、トマトにとってはいい栄養補給になるそうです。
怖いのは台風です。近年、銚子が台風の通り道になっており、年々巨大化する台風の襲来には皆さん最大限の注意を払って農業に取り組まれているそうです。
萩谷さんご紹介
モスのアグリ担当スタッフが萩谷さんのトマトハウスを訪れたのは4月中旬のさわやかに晴れ渡った日のこと。「モスさん、いつも食べていますよ。おいしいよね。」とあたたかい言葉で迎えていただきました。
部会長の萩谷さんは今年で55歳。銚子の地で代々続く農家さんの生まれです。高校を卒業されたのち、農業ハウスを扱う大手の会社に就職。その後、24歳の時にご実家に就農されたそうです。「農業ハウスの会社にいた経験から、やろうと思えばハウスも建てられるし、簡単な修理などは全部自分で出来ますよ。」とのことで、会社員時代の経験が、現在の仕事に大いに生かされているようです。
トマト作りの技術を伝承
萩谷さんのお宅では、お父さまの代の45年前からトマト栽培を始められたそうです。
ご自身がトマトを始めたのは、今から30年前だそうです。
「トマト栽培は、最初は父から学びました。本などで勉強もしましたが、やはり、一つ一つ現場で実践をしながら栽培の技術を習得してきたという感じですね。」
銚子施設園芸組合では、20~30歳台の若い農家さんが組合に加わる機会も多いそうですが、経験のない農家さんへの技術の伝承の仕組みも出来ているそうです。
「組合に入った方には、定期的に栽培講習会を行っています。種苗会社さんや、千葉県の農業技師を呼ぶなどして、しっかりとトマト栽培の技術を学んでもらう機会を作っています。」とのことです。
トマト農家の仕事とは
萩谷さんの1日は、まず、朝、トマトハウスに来たら「トマトの顔を見る」ことから始めるそうです。「30年やっていれば、トマトの調子がいいか悪いか一瞬でわかりますよ。」と萩谷さんは言います。
トマトの生長点(一番先の部分)を見て、トマトが水を欲しがっているか、栄養分を欲しがっているかなど判断をして、その日の作業を決めているそうです。
農場では、約1万本ものトマトを栽培していて、収穫は5月頃からスタートします。朝は6時から収穫、6月の最盛期は5時から収穫を開始しないと間に合わないくらいたくさんのトマトが取れるそうです。
「ちょうどこのトマトが収穫できるのが5月の頭ごろかな。令和初出荷のトマトになりますよ。」萩谷さんの目は、新時代の幕開けを見通すプロ農家の目でした。
千葉エコ農産物への取り組み
今回取材した5~7月収穫の春作トマトでは、千葉エコ農産物という環境にやさしい農業に取り組んでいます。これは、化学合成農薬の使用成分カウント数と化学肥料の窒素成分について、千葉県の慣行基準の1/2以下での管理を行うという非常に難しい栽培となります。
農薬と化学肥料を削減するために、微生物の拮抗作用を利用した微生物農薬を使用したり、地元の質のいい完熟堆肥を使用するなど、環境にやさしいトマトを作るために様々な工夫を行っています。
「銚子では、牛、豚を飼っている畜産農家さんが比較的多く、堆肥には困らないですね。
畜産農家さんも、家畜糞を堆肥化して私たち野菜農家に販売をしています。買ってもらうためにも、畜産農家さんたちもよく勉強して、質のいい完熟堆肥を作っていますよ。」と萩谷さんは言います。
東京オリパラを目指します!
萩谷さんに今後の展望をうかがいました。
「これからの農業は世界基準で行かないといけないと考えています。まずはGAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)※の認証取得を目指しています。
2020年の東京オリパラの選手村などで選手たちに提供される食材として採用されるには、GAPの認証取得が欠かせません。東京オリパラで世界の皆さんに銚子のトマトを食べてもらいたいですし、ちょうど開催時期の7月は銚子のトマトの出荷がピークの時期ですから、世界中の人たちに銚子のおいしいトマトを食べてもらいたいですね。」と萩谷さんは言います。
さらに先の、10~20年先の農業も、萩谷さんは見通しています。
「これからは農業人口が確実に減って行きますよね。だからこそ若い農家さんが多い産地でのこれからの農業はチャンスのある産業だと思います。年配の農家さんは徐々に辞めて行かれるので、その受け皿に若い農家さんがなっていけばいいなと思います。農業は伸びしろがある産業ですよ。」
※農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組のこと。
萩谷さんからのメッセージ
ひとりの客として、モスさんには週1回は必ず行ってますよ。
国産の野菜をたっぷり使用していて、以前からおいしいなと思っていました。
私は「モスバーガー」をよく食べますが、銚子のトマトは、甘味と酸味の調和が取れていてハンバーガーによく合うと思います。皆さまにも、銚子のトマトの入ったモスバーガーをぜひとも食べていただきたいです。
Text by Sato