産地だより 2019年2月

2019年2月
福岡県朝倉市 JA筑前あさくら冬春トマト部会(トマト)
代表生産者 吉塚 郁行さん

今回の産地だよりは、福岡県朝倉市でトマトを栽培している協力農家さんのJA筑前あさくら冬春トマト部会さんをレポートします。
JA筑前あさくら冬春トマト部会さんは、昭和初期から栽培をはじめた歴史ある部会です。部会のこだわりは、高品質トマト栽培を目指し、『感激73』という味のよい品種を導入しています。
また、有機物を利用した土作りを行い、病気に強く、薬剤防除に頼らない、安全で安心なトマトを作っています。
そして、こだわりは品種、土作りのみならず、設備においても、光センサーと予冷庫を導入しています。
それでは、JA筑前あさくら冬春トマト部会さんのこだわりについて探っていきたいと思います。

部会の歴史

まず初めに、JA筑前あさくら冬春トマト部会さんの歴史について、代表生産者である吉塚さんにお話を聞いてみました。
「JA筑前あさくら冬春トマト部会は、昭和初期から栽培を始めた歴史ある部会で、50年の歴史があります。その歴史の根底にあるのは、祖父から父へ、そして現在、私が跡を継いでトマト栽培をしていることだと思います。」と、話してくれました。
トマト部会は、1966年に「指定産地」の登録を受け、大型ハウス、暖房設備の導入により、栽培面積を増やしたそうです。
また、1988年には、『ハウス桃太郎』へ全面的な品種の移行が行われましたが、2003年からは、更なる高品質トマト栽培を目指し、『感激73』へ品種更新されたそうです。
JA筑前あさくら冬春トマト部会さんの味へのこだわりと、トマト栽培に対する情熱と愛情が伝わってきました。

吉塚さんのトマトハウス

吉塚さんのトマトハウス

管理されたトマトハウス内

管理されたトマトハウス内

部会のこだわり『品種』

次に、部会のこだわりである『品種』について、吉塚さんにお話を聞いてみました。
「感激73は、おいしいことが一番です。栽培が難しく、栽培管理が大変な品種ですが、私たち部会員全員の栽培技術と努力により、私たちが目指す味となりました。食感もよく、情熱の赤色、そして食味は最高です!!」と、笑顔で話してくれました。
また、トマトを栽培する生産者15名を集めて、他の品種との食べ比べをしたところ、『感激73』のトマトの食味が一番だったそうです。
『感激73』は、糖酸バランスに優れ、実測糖度以上の味が感じられるそうです。しっかりとした果肉からは、トマト本来の口当たりを味わえて、自然なトマトの味が感じられるそうです。果形は、腰高、大玉で、他の品種に比べて高い傾向にあるそうです。
吉塚さん曰く、「まさに生産者が認めた味!!モスバーガーにあうトマトです!!」と、話してくれました。

『感激73』のトマト

『感激73』のトマト

『品種』の特性をモススタッフに説明する吉塚さん

『品種』の特性をモススタッフに説明する吉塚さん

部会のこだわり『土作り』

吉塚さんに、『土作り』についてお話を聞いてみました。
「トマト栽培において、土作りは最も重要です。私たちのトマト栽培は1年1作なので、土作りを失敗すると、そのシーズンは出荷もできず、大事なお客さまに私たちのトマトを召しあがっていただくことができなくなってしまいます。私が実施している『土作り』は、有機物を利用した土作りです。その後、太陽熱消毒を実施します。結果、病気に強く、味のよい『感激73』を導入することで、安全、安心なトマトを栽培することができます。」と、話してくれました。
吉塚さんのトマト栽培は、食味のみならず、安全、安心を第一に考えた栽培であると痛感しました。

土の状態を確認する吉塚さん

土の状態を確認する吉塚さん

トマトの生育状況を確認する吉塚さん

トマトの生育状況を確認する吉塚さん

部会のこだわり『光センサー』と『予冷庫』

『光センサー』と『予冷庫』の効果について、吉塚さんにお話を聞いてみました。
「光センサー導入の重要性は、『赤くて食感があるおいしいトマト』を出荷することです。そのためには、人の目だけではなく、光センサーを使用し、規格、色目、キズ、裂果、傷みなどの品質確認を人と機械で、ダブルチェックします。その結果、規格や品質の偏りがなくなり、安定したトマトを出荷することができます。予冷庫は、出荷前の保管場所としてトマトの『軟化玉』をなくすために必要不可欠です。私たちの栽培したトマトを最高の状態でお客さまにお届けできることが何よりも幸せであると、日々思いながらトマトと向き合っています。」と、収穫後から出荷まで、そして、お召しあがりになるお客さまの気持ちを考えながら、日々トマト栽培に取り組んでいる吉塚さんの思いに感動しました。

品質、規格を確認する目揃え会

品質、規格を確認する目揃え会

部会のこだわり『栽培方法』

JA筑前あさくら冬春トマト部会さんは、受粉に関してはトマトトーン(受粉を促す液剤)のみに頼らず、マルハナバチ(受粉を助ける蜂)を用いて、省力化を図りつつも環境に配慮した着果管理に努めているそうです。
吉塚さんに、トマトトーンのみに頼らない『栽培方法』と、環境に配慮した『着果管理』について、お話を聞いてみました。
「私は、マルハナバチで受粉(マルハナバチがトマトの花を順番に回って花粉を集めると同時に受粉する)しています。労力の省力化と環境配慮ですが、ハチが着果(果樹や野菜が実をつける)したトマトの実は、実のしまりがよく、花カス(不受粉の花で、後に病気を発生)の処理がしやすく、病気発生の抑制と減農薬化に貢献し、労力の省力化と環境にも配慮しています。」と、話してくれました。

受粉をするマルハナバチ

受粉をするマルハナバチ

マルハナバチの受粉で生育したトマト

マルハナバチの受粉で生育したトマト

部会のこだわり『病害虫防除』と『耕種的防除』

次に、『病害虫防除』と『耕種的防除』について、お話を聞いてみました。
「病害虫防除ですが、私たち生産者は、『黄化葉巻病』(葉脈間が黄化して縮葉症状となり発病後は開花しても結実しないことが多く、生育初期に発病すると収穫皆無になることもある)対策に神経を使います。おいしいトマトを栽培するために苗から育てます。温度の高い、9月、10月に最も発生しやすいので、苗木は、厳選した苗木業者より苗木を購入し、購入時点での黄化葉巻病の混入を防止しています。また、育苗期については、ハウスの出入口に0.4mm目合いの防虫ネットを敷設することで、媒介害虫である『コナジラミ』の侵入を防ぐなどの耕種的防除に努めることで、薬剤防除に頼らない対策も取っています。」と話してくれました。
JA筑前あさくら冬春トマト部会さんでは、JA全農ふくれんさんを通じて、県下一斉のGAP(Good Agricultural Practice※農業生産工程管理)の実践の取り組みを始め、間違いのない、安全で安心な農産物の栽培に努めているそうです。

トマトの苗木

トマトの苗木

防虫ネット

防虫ネット

『近年の取り組み』とは?

次に、JA筑前あさくら冬春トマト部会さんの『近年の取り組み』について、お話を聞いてみました。
「近年の取り組みとしては、2014年のトマト栽培より炭酸ガス施用栽培の実証圃を導入して、さらなる高品質、多収化を図る栽培方法の確立に努めています。おいしいトマトを栽培するために、日々、生産過程、栽培管理の見直しをはかり、特に水の量、元肥の量などを検証、記録し、PDCA(Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善))を繰り返し、生産管理や品質管理などの管理業務に落とし込むことで、栽培方法の確立に役立てています。」と、話してくれました。
生産過程、栽培管理のPDCA化により、さらなるおいしさを追求する取り組みは、すばらしいと思いました。

炭酸ガス発生装置

炭酸ガス発生装置

『新規就農』への取り組み

最後に、JA筑前あさくら冬春トマト部会さんの『新規就農』への取り組みについて取材しました。
JA筑前あさくらさんでは、『新規就農』に積極的に取り組んでいます。その取り組みの一環として、2018年に完成したJA筑前あさくら中央選果場(梨、柿を選果)の敷地内に、新規就農者のためのトマトハウスの研修施設を建設しました。
新規就農者へ指導する方々は、トマト部会のOBさん、普及センターのOBさんです。
『近年の取り組み』でもふれたように、トマトハウスの研修施設には、『炭酸ガス発生装置』が設置されています。『炭酸ガス発生装置』は、光合成促進装置とも言われています。締め切った冬場のハウスでは光合成に必要な二酸化炭素が不足がちです。 トマトの成長過程である光合成に必要な炭酸ガスを供給し、トマトの成長の促進、増収、品質向上を目的として炭酸ガス発生装置(二酸化炭素発生装置・光合成促進装置)を用いられたそうです。
指導員の空閑さん曰く、「ハウス内の二酸化炭素が400ppmを下回ると、炭酸ガスが自動で発生し、設定している400ppmに達成すると炭酸ガス発生装置が止まります。」と、説明していただきました。
ちなみに400ppmは、ハウス外の二酸化炭素濃度と同じであるとのことです。
言い忘れましたが、もちろん研修施設で栽培するトマトの品種は『感激73』です。

選果場施設内にある研修用のトマトハウス

選果場施設内にある研修用のトマトハウス

指導員の空閑さんとJA筑前あさくらの松尾さん

指導員の空閑さんとJA筑前あさくらの松尾さん

福岡県の伝統野菜『かつお菜』を栽培!!

吉塚さんは、トマトの栽培以外に、福岡県の伝統野菜『かつお菜』を栽培しています。
取材に伺った12月末は、『かつお菜』の収穫時期であり、従業員の皆さんに、お忙しい中色々とご対応いただきました。
せっかくなので、『かつお菜』は、どのような野菜なのか?どのような味なのか?どのような料理に使用されるのか?など、取材をしました。
『かつお菜』は、福岡県で栽培される葉物野菜であり、高菜の一種だそうです。
食した時の味わいは、魚の『鰹』に似ているとされているので、『鰹魚菜』とも書くそうです。
また、『勝男菜』、『勝女菜』とも言われ、『勝つ』に通じる縁起物として、福岡県では雑煮の具などに古くから用いられているそうです。
吉塚さん曰く「味は、甘味と苦味のバランスがよく、料理では雑煮が主ですが、サラダや炒め物でもおいしいです。」とのことです。
年末になるとスーパーでは、『かつお菜』が売り場に大量に並べられるそうです。この風景を見ると年末だなあという雰囲気になるそうです。

『かつお菜』の圃場

『かつお菜』の圃場

『かつお菜』の収穫

『かつお菜』の収穫

かつお菜を収穫する従業員の皆さん

かつお菜を収穫する従業員の皆さん

JA筑前あさくら冬春トマト部会さんからのメッセージ

JA筑前あさくら冬春トマト部会さんにモスバーガーのお客さまに向けて一言いただきました。
「私たち生産者が認めた『感激73』は、苗木の厳選から育苗、栽培、収穫、出荷まで、一切の妥協を許さない、おいしいトマトです。50年の歴史は、今なお進化し続けています。さらなるおいしさを追求するために、日々邁進しています。」
伝統ある朝倉のおいしいトマトをぜひモスバーガーのお店でご賞味ください。

  • ※JA筑前あさくら冬春トマト部会さんのトマトは、1月中旬から5月下旬ごろまでの予定で、九州エリアの店舗に出荷いたします。
JA筑前あさくら冬春トマト部会の皆さん

JA筑前あさくら冬春トマト部会の皆さん

Text by Osako