2018年12月
宮崎県日向市 興農宮崎(トマト)
代表生産者 安藤 広信さん
産地だより 2018年12月
今回の産地だよりは、宮崎県日向市でトマトを栽培している協力農家さんの興農宮崎さんをレポートします。
興農宮崎さんは、30年前から土、環境にこだわり、適地適作を基本として、安全でおいしいトマトを栽培しています。
また、興農宮崎さんのトマトは、『毛細根』を多く出すことでトマト本来の力を引き出し、安全でおいしく栄養価の高いトマトを栽培する手法を取り入れています。
そして、おいしさと安全安心なトマトをお届けするために、新しい農業を目指しています。
それでは、30年以上の経験とこだわり、そして愛情がいっぱいのトマトを栽培している興農宮崎さんのレポートを開始します。
『土』へのこだわりとは?
まず初めに、興農宮崎さんの土へのこだわりについて、代表生産者である安藤社長にお話を聞いてみました。
「この辺りの土壌は、小石混じりの赤粘土で、九州に多く分布しています。豊富に有機物を含む「黒ぼく土」とは異なり、赤粘土はいわば「痩せた土」です。この土壌で、トマト栽培を始めたころは、『あんな土で、ろくなものができるものか!!』と、他の生産者によく言われました。だからこそ、故郷の決して豊かではない土壌でトマトを栽培することが、私たち農業の原点となったのです。」と、話してくれました。
安藤社長の故郷を愛する想いが、不利な状況下でのトマト栽培への挑戦となったのです。
また、トマト栽培の当初から安藤社長の考え方、栽培方法、そして土壌の性質を熟知した奈須さんと二人三脚で、興農宮崎のトマトを栽培しています。
『環境』へのこだわりとは?
次に、環境へのこだわりについて、安藤社長にお話を聞いてみました。
「私たちは、30年前から栽培環境にこだわり、安全でおいしいトマトを栽培してきました。これまでのトマト栽培で培った経験と、今日まで持続して栽培していることが私たちの一番の強みです。そしてその強みとは、私たちがトマトを栽培する環境を選択することから始まります。その選択とは・・・・
1.日当たりがよく、排水のよい園地であること。
2.赤土や石混じり、粘土質土壌であること。
3.光が強く、冷涼な気候条件であること。
それらの選択により、原生地の環境に近づけて栽培することができるのです。」と、話してくれました。
原生地の環境に近づけると、乾燥した環境となり、その環境で栽培したトマトは、糖度が上がっていくことを長年の経験から積み重ねて得たそうです。
『適地適作』とは?
次に、「適地適作」についてお話を聞いてみました。
「トマトの原産地は、南米ペルーの高地です。痩せた土地、太陽、そして高地ゆえの朝夕の激しい寒暖差・・・・。ここ宮崎で、トマトを栽培する時期は、南米ペルーの高地と条件がよく似ています。トマト原産地と遠く離れた宮崎の冬から春先は、まさに南米ペルーの高地に似た環境を再現できるようになります。」と、話してくれました。
安藤社長のお話を伺い、環境へのこだわり三つの選択条件は、南米ペルーの高地であり、その環境と似た圃場でトマトを栽培していることを深く理解することができました。
興農宮崎さんは、11月からトマトの収穫が始まり、1月から5月は収穫の最盛期となるそうです。
『毛細根』を多く出す栽培方法とは?
次は、興農宮崎さんの栽培技術である『毛細根』を多く出す栽培方法について、お話を聞いてみました。
「『毛細根』は、石混じりや粘土質の痩せた土壌で栽培することで、植物が本来もっている力を発揮させ、より多くの根を出すことが、長年の経験からわかりました。私たちはその根を『うまい根』と呼んでいます。『毛細根』は、太い根の周囲に、細かな無数の根が豊かに生えています。土が柔らかく、栄養豊富だったら、『毛細根』は生えません。根も太くなり、まっすぐな根になってしまいます。まっすぐな根は、水分と窒素分をよく吸収しますが、その他の栄養分の吸収は弱くなります。反面、私たちの圃場では、根は石に当たり、阻害されて成長するため、厳しい環境であることを根は自覚し、刺激されることで、貪欲に栄養を吸収するため、細かな『毛細根』を発生します。それによりトマトは、
味わい豊かなトマトとして結実します。恵まれすぎた環境は、薄っぺらな味のものしか作れない、私たちはあえて逆境や困難に立ち向かうことで、トマトの成長力を促進し、味わい深い、おいしいトマトを栽培することができるのです。」と、話してくれました。
長年の経験により培った『毛細根』の栽培方法は、興農宮崎さんのあえて逆境と困難に立ち向かった栽培技術であると痛感しました。
『味』のバラつきをなくすための手法とは?
引き続き、安藤社長に『味』のバラつきをなくすための手法についてお話を聞いてみました。
「同じ圃場でも、トマトごとに味のバラつきがあります。そのバラつきを少なくするために、1玉、1玉、光を使用した糖度センサーで測定しています。私たちは15年以上前から、いち早く糖度センサーを導入して、『味』のバラつきのないトマトを出荷しています。」と、話してくれました。
栽培技術のみならず、収穫後のトマトに対する『味』への妥協を許さない興農宮崎さんの姿勢には感服しました。
『新しい農業』とは?
次に、興農宮崎さんが取り入れている「新しい農業」について、安藤社長にお話を聞いてみました。
「簡単に言えば、近代農法で確立された過肥料、過栄養に拠らず、原産地に近い厳しい環境を構築し、その環境の中で、トマト本来の生命力を引き出そうとする農法です。今までの収穫量を多くすることを「よし」とする農法から、おいしさを追求する農法です。また、私たちは、グローバルギャップ手法による品質管理を取り入れ、『感謝』、『感動』、『感激』という『3K農業』を目指しています。」と、話してくれました。
栽培管理
次は、興農宮崎さんの栽培管理についてお話を聞いてみました。
「私たちは、『根』を大切にするために、雑草、土壌病害対策で使用する除草剤や土壌消毒剤は使用せず、太陽熱消毒を実施しています。結果、『毛細根』をたくさん発生させることにより、病害に強くなり、おいしいトマトが栽培できることがわかりました。また、『根』の状態により、食味、糖度に大きな差がでることもわかりました。その『根』を作るためには、少ない肥料、水で栽培するので、細かな観察をして、より多くの『根』を作るための努力をしています。」と、話してくれました。
農業体験
次は、興農宮崎さんの『農業体験』への取り組みについてご紹介します。
興農宮崎さんでは、地元の高校生を対象に、農業体験を実施しています。対象となる学年は1年生で、農業体験は3日間のスケジュールで行われます。
農業体験の内容は、マルチ張り(作物を育てている圃場の畝を覆う資材で、雑草が増えてしまったり、雨によって肥料や土壌が削られてしまったりすることを防止する資材)と、葉かき作業(採光性と風通しの改善、病気の予防や成長エネルギーの消耗防止)です。
3名の高校生は、生産者の黒木 康則さんらから作業指導を受けて、マルチ張り、葉かき作業を実施します。
高校生たちは、生産者さんから直接指導を受けているので、作業の手際はよく、他の生産者さんと何ら問題なく、作業に溶け込んでいました。
地元の高校生を対象とした農業体験は、10年以上続いた活動です。
しかし、残念なことに対象となる高校が少子高齢化により廃校となり、今年が最後の農業体験になるとのことです。
農業体験に参加された高校生の皆さまが、いつの日か、黒木さんをはじめ、生産者の方々と一緒に、トマト栽培することを期待しています!!
沖縄県名護市でもトマトを栽培!!
興農宮崎さんでは、宮崎県以外でもトマトを栽培、指導しています。栽培場所は、沖縄県北部の名護市屋我地地区です。
土質と環境がよいことから、8年ほど前から栽培試験をはじめ、よい結果を得たことから、部会5名で部会を発足し、冬の産地として仲間入りをしました。
沖縄県北部は、南部のアルカリ土壌の『じゃーがる』と異なり、赤土で『まーじー』と呼ばれる酸性土壌で、パイナップルなどの果物を栽培するのに適した土なので、結果、糖度、栄養価が高くなり、おいしいトマトが栽培できるそうです。
興農宮崎さんでは、冬春は、宮崎県、沖縄県でトマトを栽培し、夏秋は、青森県で部会を起ち上げて、トマトを栽培することで、産地リレーによる年間供給を計画しているとのことです。
興農宮崎さんにモスバーガーのお客さまに向けて一言いただきました。
「私たちは30年前から、土、環境にこだわり、適地適作を基本として、安全でおいしいトマトを作ってきました。この私たちの想いが、モスバーガーのお客さまの心に伝わるように、日々のトマト栽培に取り組んでいきます!!」
安藤社長、奈須さん、そして生産者の皆さんが、あえて困難な環境を選択して栽培したトマトをぜひモスバーガーのお店でご賞味ください。
*興農宮崎さんのトマトは、11月下旬から5月下旬ごろまでの予定で、九州エリアの店舗に出荷いたします。
Text by Osako