2018年10月
熊本県八代市
株式会社モスファームマルミツ(トマト)
代表取締役社長 満島 清志さん
産地だより 2018年10月
今回の産地だよりは、2015年4月に、株式会社モスフードサービスと熊本県八代市・阿蘇山麓でトマトを生産するマルミツアグリ株式会社と共同出資で設立された株式会社モスファームマルミツのご紹介です。
モスファームマルミツは、熊本県八代市に設立し、八代農場は八代平野のミネラル分豊富な土壌を活かして11月~6月にトマトを栽培します。阿蘇農場は標高800m地帯に位置し、夏の冷涼な気候を活かして7月~11月にトマトを栽培します。食味に優れたモスバーガーの規格に合う、L玉トマトを中心に栽培。地域農業の振興、若手農業者の育成という面でも、地域貢献、社会貢献を図っています。今回の取材は、トマト苗の生育中の八代農場と収穫のピークを迎えている阿蘇の2農場をお届けします。
株式会社モスファームマルミツ 代表取締役社長 満島清志さん
満島清志さんは、今年で53歳。トマトの出荷をしている「マルミツ園芸株式会社」の取締役を務めながら、自社農場である「マルミツアグリ」と「モスファームマルミツ」の代表も務めています。
もともと、実家がトマト農家であり、子どものころから、もの作り、トマト作りが大好きだったそうです。物心ついた頃から、家業のトマト栽培を手伝っていたそうです。
「実家の農場を継ぎたい」という気持ちも強かったそうですが、実家はお兄さんが継いだこともあり、同じ「もの作り」の世界で興味のあったTV制作の世界に入るために、思い切って上京したそうです。TV制作会社では、ADとしておよそ10年間、制作の現場で昼も夜もなく忙しく働いたそうです。
20年前に、お父さんがマルミツ園芸を新しく立ちあげるのを契機に、その経営に携わるために熊本に戻ってきたそうです。「熊本に戻ってきた時は、『自然の中で働けてなんて幸せなんだ。』と思いましたね。トマトは何も言わないだけに、人間相手のTV業界より、楽と言えば楽ですね。何も言わないだけに、逆に怖いときもありますけど…。でもトマトは可愛いですよ。愛を注げば応えてくれますが、かまい過ぎてもダメなんですよ。なかなか難しいですよ。」と満島さんは語ってくれました。
農場経営者の日々とは?
満島さんは現在、出荷の仕事をしながら、冬は八代の2.8ha、夏は阿蘇の高冷地で1.8haのトマト栽培を行うという、超多忙な日々を送っています。
そんな満島さんの1日は、朝のハウス回りから始まります。「毎朝6時頃には農場に来て、全ての畑を巡回します。前日に与えた肥料や、水、管理作業などの効果が目に見えて解るのが翌朝のトマトの状態なんです。樹の状態を見て、今日の仕事は何をするか、肥料、水の管理はどうするか、など全て決めますね。」と満島さんは言います。
その後、出荷の集荷場に行き、取引先からのクレームや、作業のポイントを従業員に伝える。それが終わると、帳簿の整理など会社の経営的な部分の仕事をこなしたり、営業用の資料を作ったり…と、やるべき仕事は絶えません。「1年で最もきついのは5月。阿蘇の高冷地の農場の定植と、八代の農場の収穫最盛期が重なって、この時期だけは本当に忙しいですね。」とにこやかに語る満島さん。モスのスタッフにも、本当にトマト作りが大好きな人なんだなと伝わってきました。
八代農場へ
出迎えてくれたのは、社長の満島さん、社員の不動さんと篠塚さんの3名でした。こちらのハウスでは、8月末にトマト苗を定植、11月下旬から翌年の6月まで収穫をするそうです。冬は加温し、苗を植え替えず10カ月間という長い期間、栽培をしています。
さっそく、現在の栽培状況を不動さんにお聞きしました。「今年の夏は、日本全体が高温に見舞われたように、この八代も例外ではなく、定植時期のハウス内が約50℃と高温になり、環境としてはよくなかったですね。採点すると100点満点中、40点ですね。徒長気味で節間(葉と葉の間)が伸びてしまいました。今は樹の状態をよくするため、根をしっかりはらせるよう水をギリギリまで抑え、日々注意して管理しています。」と答えてくれました。確かによく見てみるとトマトの樹は少し萎れていました。来年の6月までの長期間収穫するために樹の基礎体力づくりを行っていました。
土作りについてもお聞きしました。「マルミツでは、米ぬかと糖蜜を混ぜた『米ぬかぼかし』を使っています。これは微生物が多く繁殖し、根の末端の毛細吸収根の生長がよく、土壌病害に効果があると言われています。」と教えてくれました。
できるだけ農薬や肥料に頼らず、トマトが本来持っている力を出せるよう根気強くやっていることが伝わってきました。
阿蘇農場へ
こちらのハウスは2017年3月完成で今年が2作目になります。満島さんにここのハウスの状況をお聞きしました。「2作目ですが土質もよく、手ごたえを感じています。」と笑顔で答えてくれました。
翌日、八代から車で2時間半、阿蘇山中の阿蘇農場に行ってきました。当日は高冷地特有の朝もやの中到着しました。
さっそくハウスの中に入れていただくと、トマトの大小が鈴生り状態で圧倒されました。着果がよいのはどのようにしているか満島さんに方法をお聞きしました。「このハウスは、私たち人間(スタッフ)が施肥や茎の剪定を行い、受粉はすべてマルハナバチたちが頑張ってくれています。ここの気候がマルハナバチの活動にぴったりあっているからだと思います。」と答えてくれました。確かに、八代では気温が高いとマルハナバチが活動しなくなり、人間が受粉作業を行います。
阿蘇での栽培の難しさもお聞きしました。「ハウスの周りは森林や草原ばかりで、虫が多いこととたぬきがマルハナバチの巣を狙ったりします。外敵の侵入を防ぐなど、八代にはない難しさがありますね。(笑)」と笑顔で話してくれました。たぬきが出没するとは驚きです。同じ熊本県内でも圃場の位置により栽培方法を変えるトマト栽培の難しさを強く感じました。
満島さんからのメッセージ
いいトマトを作って、いいトマトを食べていただくということが大事だと思っています。
安心・安全は当たり前で、味にこだわったトマトをこれからも継続的に作っていきたいと思います。
Text by Iigusa