2018年6月
大分県臼杵市
はしもと農園(パプリカ)
代表生産者 橋本 文博さん
産地だより 2018年6月
今回の産地だよりは、大分県臼杵市でパプリカを栽培している協力農家さんのはしもと農園をレポートします。
はしもと農園は、丘の上に圃場があり、太陽の光をいっぱいに浴びたパプリカが伸び伸びと育っています。
標高は120mで、九州にありながら夏の熱帯夜がほとんどない場所です。
そのため、夏の間も栽培することができ、冬の間はハウス内を加温して栽培するので、年間を通じてパプリカを出荷することができます。
それでは、パプリカを栽培しているはしもと農園のレポートを開始します。
パプリカ栽培のきっかけとは?
まず初めに、はしもと農園がパプリカ栽培に携わったきっかけについて、代表生産者である橋本社長にお話を聞いてみました。
橋本社長は、2000年のバブル経済崩壊後、それまで11年間勤めた東京の大手商社を早期退職し、脱サラで農業の道を選びました。
そして、郷里である大分県臼杵市で、ご夫婦で初めての農業に挑戦したそうです。
その当時、パプリカはまだまだ日本では知られていない西洋野菜でしたが、将来性を感じて取り組んだそうです。
それまでの仕事に忙殺され家族との時間が取れなかった商社時代とは生活が一転し、今では息子さんらと語り合い、経営者としての腕を磨いた奥さまと二人三脚で、大地と向き合ってパプリカ栽培に取り組んできました。
丘の上にある圃場とは?
丘の上にある農場について、橋本社長にお話を聞いてみました。
「就農直後は、知識も経験も、そして資金もなく、地域内に遊休温室(ハウス)を見つけては、それを借りてパプリカを栽培しました。」と、話してくれました。
就農5年目を迎えるころには、パプリカ栽培に適した土地を選ぶ感覚が備わり、日当たりがよく将来的に増産が可能な広々とした丘の上の土地を見つけて、栽培を拡大しています。
現在は、無加温の単棟ハウス、加温式の連棟ハウスの2区画で、圃場面積は1haになりました。栽培方法は、半年ずつずらしたリレー栽培をすることで、パプリカを年間供給しています。
ブランド名である「おおいたのパプリカ兄弟」の由来とは?
橋本社長に、ブランド名である「おおいたのパプリカ兄弟」の由来についてお話を聞いてみました。
「パプリカの色は、赤、黄、オレンジと、色とりどりです。にぎやかで楽しいイメージを伝えるために「兄弟」という言葉を盛り込みました。当時、我が家の息子二人は小学生。家庭でも圃場でも「兄弟」の成育、成長を見るのが楽しく、その思いをブランド名の「おおいたのパプリカ兄弟」としました。妻と二人、二人三脚で始めたパプリカ栽培ですが、現在は従業員が10名を超えました。それでも、就農当初と変わらない、家庭的でぬくもりのある職場です。」 橋本社長の人柄と、従業員、パプリカ栽培に対する愛情が伝わってきました。
環境負荷の少ない栽培方法とは?
環境負荷の少ない栽培方法について、橋本社長にお話を聞いてみました。
「2000年の就農当初は、秋に植え付け、翌春まで収穫する冬越し作型のみの栽培方法でした。冬越しの作型では、化石燃料を使用してハウス内を加温することが必要になります。現在は、春に植え付け、秋の終わりまで収穫できる夏越し作型を増やしています。夏越し作型であれば、加温は不要ですので、より環境負荷の少ない栽培方法になっています。」と、話してくれました。
また、はしもと農園では、天敵昆虫を放して害虫を退治することで殺虫剤の使用を減らしており、化石燃料の使用を減らすこと以外でも環境負荷を少なくするように取り組んでいます。
周年栽培を可能にした栽培方法とは?
環境負荷の少ない栽培方法に続き、周年栽培を可能にした栽培方法についてお話を聞いてみました。
「冬越し作型で11月から6月まで収穫する加温ハウスと、夏越し作型で7月から11月まで収穫する無加温ハウスの両方を組み合わせることで、同じ場所での周年栽培が可能となりました。標高120mの立地が幸いして周年栽培ができたと思います。」と、話してくれました。
ちなみに、冬越し作型の場合は、夜のハウス内温度を17℃から18℃に設定し、昼は太陽光のみで温室内を暖めています。
また、夏越し作型は、昼のハウス内温度を30℃以下にするために、こまめにハウス内を換気して、風通しをよくします。それにより、ハウス内を快適な環境にして、パプリカの生育を促進しているそうです。
栽培管理(整枝)
次に、「整枝」作業についてお話を聞いてみました。
「整枝は、強く伸びてくれそうな枝を残し、残した枝に大きく整った果実を実らせる基本作業です。この作業を怠ると、枝が必要以上に増えてしまい、大小の実が無数につき、果形も大きさもバラバラになり、見た目も悪くなってしまいます。この作業をこまめに実施することで、安定した収量と品質を確保することができます。」と、話してくれました。
栽培管理(摘果)
「整枝」作業の次は、「摘果」作業についてお話を聞いてみました。
「摘果は、温度不足などで、果形が整っていない果実を取り除き、新たな果実に栄養を与えるための作業です。その作業により、新たな果実が枝先で生育し始めます。そして、果形、大きさ、見た目も整ったパプリカが育ちます。」と、話してくれました。
「整枝」作業同様に、「摘果」作業も、品質のよいパプリカを育てるための必要不可欠な作業であり、毎日パプリカと向き合わなければならない大変な作業であると、お話を聞いて痛感しました。
栽培管理(誘引)
「誘引」についてお話を聞いてみました。
「鉛筆ほどの太さの枝にリンゴほどの大きさまでパプリカの実が育つので、重さで枝が折れないように、頭上から吊るした糸に枝を巻きつけて、枝と果実を宙吊りに支える作業です。誘引は、枝先、葉を太陽の光にたくさん浴びさせて育てるための大切な作業です。また、誘引することにより、枝、葉の手入れもし易くなり、全体の生産性が向上します。」と、話してくれました。
最後に、収穫方法について教えていただきました。「収穫は、必ずナイフを使用します。ハサミでは切り口を押し潰してしまい、切った断面が傷みやすく、品質が低下します。」
パプリカ直売所オープン!!
昨年12月3日、はしもと農園にパプリカの直売所がオープンしました。店内にはリーフレタスやパプリカの苗、バジルの苗なども並んでいます。
直売所ははしもと農園の敷地内にあり、橋本社長と奥さまの温かみのある人柄を映し出したような建物です。
奥さまは千葉県出身ですが、直売所を通じて、お買い物にいらっしゃる方々と話す機会が増え、地域とのつながりが深まったといいます。
直売所は、パプリカの販売だけでなく、地域のオアシスとなるよう願っているそうです。
はしもと農園からのメッセージ
橋本社長にモスバーガーのお客さまに向けて一言いただきました。
「私たちは、日当たりのよい丘の上で、健康な野菜を作ることに取り組んでいます。我が家の子育てと一緒で、あまり手をかけ過ぎないことが大切。植物の生きる力が、人々の喜びにつながるように、日々働いています。地元九州で、私もよくモスバーガーを食べます。手間を惜しまない日本人の心が作りあげたおいしさですね。私たちもモスバーガーに負けないように、パプリカを作っています。食べる方に喜んでいただけるのが、何よりの働く励みです。」
Text by Osako