2017年9月
北海道網走郡美幌町
チームやらまいか 玉葱部会 北海道(玉ねぎ)
代表生産者 刈谷 武さん
産地だより 2017年9月
今回の産地だよりは、北海道道東エリアオホーツク地方の美幌町で、主に中京地域へ向け、玉ねぎを作っていただいているチームやらまいか玉葱部会北海道の刈谷 武さんをレポートします。
美幌町は北海道の東部、オホーツク海から30kmほど内陸に位置しており「美幌峠」や「屈斜路湖」などはとても近く、これぞ北海道!の風景が広がっています。天候はオホーツク海の影響で、夏は30℃前後のカラリとした高温に恵まれ、降雨量は年間600mm程度と比較的に少ないので、玉ねぎの他に、甜菜(ビート)、小麦、じゃがいもなどの栽培にとても適した農業を基幹産業とした町です。
「何かが違う…」と感じつつ、刈谷さんの玉ねぎ圃場に到着
7月中旬、札幌から車で美幌に向かいました。大雪山を越える峠を降りるとたくさんの玉ねぎ畑がありますが、「いつもと何か少し違うな…」と感じながら美幌町に入りました。そして刈谷さんの玉ねぎ畑を見てようやくわかりました。4月の定植時期は天候に恵まれて苗植えも順調。その後、豪雨と干ばつに高温と玉ねぎにとっては相当なストレスがかかったのだと思いますが、刈谷さんの畑の玉ねぎの葉が“スーッ”と素直に、何事もなかったように立っていたのです。葉先の枯れも少ない。畑をみて“とても安心できる”心もちになります。なぜこの違いが出るのか。とても不思議です。
日常の観察
刈谷さんと久方ぶりの再会でしたが、挨拶もそこそこに「どうしてこんなに違うのですか?」といきなり聞いてしまいました。簡単に答えられる内容でないことは分かってはいたのですが。刈谷さんからは「まず、日常の観察、だな」との一言。栽培前の土づくり、緑肥(植物を枯らしたり、腐らせたりせず、そのまま土壌にすき込んで肥料とする)、微生物、肥料内容と構成、ミネラル分をどう組み合わせるか。栽培するものに対しては、どうやって「根」を作ることを助けるかなど、ひとつずつ語っていてはいくら時間があっても足りるはずもありません。
基本は「なぜ道端の雑草は肥料もないのに、あんなに根が張って抜けないのか?」
「生き物は子孫を残すために、また自分も生きるために、植物の場合は必死に肥料を求めて根を張り巡らす。これが自然界の法則。しかし、種から根が出た時にその周りに十分な栄養があったらどうなるか。植物は無駄なことはしません…。その後はどうなるか分かりますね」非常に分かりやすい内容です。しかし、これを栽培で実践することが難しいのです。
話をもう少し進めて…「栄養周期」という考え方
簡潔に言うと「作物の生育の段階や状態に応じて、その時々に適切な栄養を供給し作物を素直に育てていく」こと。例えば、人間の赤ちゃんの場合、生まれた時は栄養バランスがとれた母乳か粉ミルク。少し経つとミルクに離乳食。中学、高校になると肉や炭水化物が多い食事…と発育にともなって食事内容が変化します。植物の場合も、発芽時期、生長初期、中期、花や実を充実させる時期、その時々で必要になる栄養内容は違うので、それに応じて施肥や栽培管理をしてあげることが普通です。しかし、これを実践となるとやはり努力と感性が必要だと感心するばかりです。
「チームやらまいか」の想い
刈谷さんに「このような難しいことをどうやって習得しているのですか?」と尋ねました。「もう20年も静岡のチームやらまいかの皆さんに教えてもらっている」とのこと。
“やらまいか”とは、渥美半島や静岡西部の方言で「やってみよう」「やろうじゃないか」という意味。チームやらまいかは渥美半島を中心としたその地域の農家さん達が集まり「おいしくて安全安心な農産物をお客さまに届けたい」という想いを持って活動しているグループです。栽培に対しての共通の想いと栽培方法の考え方があるから、距離はあっても分かり合えるのだとあらためて思いました。
大規模経営と玉ねぎ品質
近隣で同じチームやらまいか玉葱部会北海道のメンバーである佐久間さんの圃場にも伺いました。最近の天候変化についてお話ししていると、目についたのが倉庫の内外に置かれていた様々なとても大きな機械です。これまでじっくり見たことがなかったので一台ずつ佐久間さんから説明いただきました。機械に共通しているのは“玉ねぎを傷つけない”と同時に、処理スピードを速くすること。大規模な玉ねぎ畑を少人数で収穫作業し、かつ玉ねぎへのキズや傷みがなく品質を保持したままで収穫、出荷できる秘密がまた一つ理解できました。
最後に
刈谷さんからモスのお客さまへ一言いただきました。
「安全・安心はもちろん。おいしいものを作り続けたいと毎日、観察と試行錯誤をしながら、ずっと考えぬいて栽培している玉ねぎです。味わってください!」
今度、ぜひとも実際に玉ねぎの栽培現場を観察してみてください。
Text by Tomio