産地だより 2017年4月

2017年4月
栃木県大田原市
21那須北園芸 グリーンブライト農場(トマト)
渡辺 亮太さん

今回の産地だよりは、栃木県大田原市でトマトを栽培する協力産地、21那須北園芸、グリーンブライト農場の若き三代目、渡辺 亮太さんにスポットをあてます。大田原市は冬期の日照量が全国随一の地域であり、豊富な日照量と昼夜の気温の寒暖差を活かして、11月末に苗を植えて3月頃から収穫を行う春トマトの産地になっています。21那須北園芸はこの地で、「味まじで最前線」という旗印のもと集結した、こだわり農家6名のグループです。市内では「あさか直売所」の運営も行っており、メンバーの皆さんが栽培したこだわりのトマトや、近隣の農家さんが栽培した珍しい野菜、加工品も購入できます。

「味まじで最前線」スローガン

技術の練磨 元気で丈夫なトマトづくりの確立
完熟堆肥で腐植に富んだ土づくりが原点
環境 那須野が原の日照量、気温格差全国随一
安心 有機質肥料主体、農薬安全基準の厳守
健康 機能性を高くして健康づくりに貢献する。

歴史のある協力産地です。

モスと21那須北園芸の取り組みの歴史は、今から20年前に遡ります。まだモスが協力農家さんとの取り組みを始める前段階で、全国のこだわり農家さんを探索して回っている時期に、農業関係者の紹介により、亮太さんの祖父である前代表の正男さんと知り合うことが出来ました。正男さんは、栃木県の名誉農業士であり「桃太郎とまと」の大規模産地化に成功した第一人者として、地元でも有名な篤農家でした。
モスとしてもいい出会いとなり、正男さんからトマトの栽培技術、農業者の皆さんとのお付き合いの仕方など含め、取り組みのイロハを教わったと言っても過言ではありません。それから毎年、春から初夏にかけて、関東、東北地区のモスのお店に、おいしさ第一にこだわってつくったトマトをお届けしています。

左から、父の豊さん、祖父の正男さん、亮太さん

左から、父の豊さん、祖父の正男さん、亮太さん

21那須北園芸が運営する「あさか直売所」

21那須北園芸が運営する「あさか直売所」

3代目トマト農家

3月のはじめ、モスのスタッフが渡辺 亮太さんのもとを訪れました。いつ来てもきれいに整備された農場には、収穫を待つおいしそうなトマトがたわわに実っていました。
亮太さんは今年で27歳。物心ついた時からトマトのハウスで遊んでいたそうですが、「手伝いはほとんどしてなかったですね(笑)」とのこと。
亮太さんは、高校の普通科を卒業後、4年制大学の経済学部に入学しましたが、具体性に欠き、ざっくりとし過ぎる大学の授業内容に物足りなさを感じ、経済学を学び続けることに悩み出していました。そんな悩みを抱えながら、夏休みに実家に帰って来た時に、何気なく実家のトマトをかじった時に「これはうまい!」と改めて感じたそうです。
その時、「もしこんなおいしいトマトをつくって、農業でご飯が食べられないのであれば、僕の代で農業を辞めるべきだな。」と思ったそうです。農家をやるのであれば農業の専門学校に行くべきだと一念発起。思い切って大学を中退して、タキイ研究農場付属の園芸専門学校に入学をしました。「今の僕があるのは、あの時、何気なくトマトをかじったからですね。」と亮太さんは言います。

3月初旬の農場の様子

3月初旬の農場の様子

品種は「CF桃太郎J」です。

品種は「CF桃太郎J」です。

おいしいトマトづくりの秘訣は?

モスのスタッフが全国いろいろな産地を回る中でも、21那須北園芸のトマトのおいしさは群を抜いているという評価があります。改めて聞いてみると、そこには数々の秘訣が隠されていました。
まず、品種には、促成栽培(冬に生育する作型)の中でも、味がしっかりのって、玉伸びがする品種ということで「桃太郎J」を選んでいます。肥料は、有機質を主体として、無理なくじんわりゆっくりと効くものを使用しています。有機質の肥料は、微生物が分解して初めて植物が吸える状態になります。微生物のエサにもなるし、微生物が活性すれば地温も上がってくるのでトマトの生育にもよい影響を与えてくれます。また、毎年、籾殻と牛糞を1年間寝かせてつくった自家製堆肥をたっぷりといれて、地力を維持し続けています。
さらに、トマトの収穫を終えた夏には、連作障害を防ぐために、トマトハウスの中に水を張って、約1ヶ月間の「湛水処理」をするそうです。こうすることで、病原菌が少なくなる効果、余分な肥料分を洗い流す効果があり、毎年、同じ畑でおいしいトマトづくりを続けることが出来るのです。

トマトの管理作業をする亮太さん

トマトの管理作業をする亮太さん

堆肥は籾殻、牛糞などを1年寝かせてつくります。

堆肥は籾殻、牛糞などを1年寝かせてつくります。

苗づくりから自分たちで

最近では、苗業者さんが苗をつくって農家さんに販売することが主流となっていますが、グリーンブライト農場では、当然のごとく自家製苗をつくることを継続しています。亮太さんと同期の農家さんからは「トマトの苗って自分でつくるものなの?」とよく言われるそうです。
農業の世界では「苗半作」と言われており、苗の良し悪しでその年の収穫の出来不出来が決まると言われています。
「市販の苗は、フカフカの柔らかい培土で苗をつくりますが、うちの苗は、近所の山から芝を刈り集めてきて自家製の培土でつくっています。比較的、重めの土です。無論、作業性も落ちて手間はかかります。でも、重くてしっかりした培土を使用すると、苗づくり中に灌水する回数も少なく済み、引き締まった苗がつくれるんですよ。」と亮太さんは言います。
まさに「苗半作」、苗の時点からおいしいトマトづくりの真剣勝負が始まっているのです。

自慢の自家製堆肥を確認中

自慢の自家製堆肥を確認中

芝を寝かせてつくった自家製の床土

芝を寝かせてつくった自家製の床土

苗づくりの様子

苗づくりの様子

丹精込めた自製苗です。

丹精込めた自製苗です。

将来の夢は?

実家に就農して丸4年目。トマトづくりを4回やってみての今時点での感想を聞くと、「もし自分一人で管理をしていたら、今の完成度の6~7割のレベルしか出来ないと思いますね。父や母、パートさんの力を借りながら、まだまだやるべきことがいっぱいありますね。」と亮太さんは言います。
「いまは、祖父、父が築いてきたトマトづくりのレベルに、まずは到達することが第一目標ですね。これからは、僕も結婚して家庭を持ち、農業でしっかり生計を立てて行ける農家になりたいですし、いろいろな人に評価されるトマトをつくり続けたいですね。」と亮太さん。
「昔ながらの方法のトマトづくりは、確かに手間がかかるし大変な仕事です。今の若い農家さん達は、水耕栽培など管理しやすい方向に行きたがります。僕もいろんな産地のトマトを視察して、試食もしてきましたが、うちのトマトのような感動するおいしさのトマトはなかなかないと自負しています。こういうトマトづくりの技術を、祖父、父からしっかりと伝承して、次の世代に残せていけたらいいなと思っています。」
亮太さんの頼もしい言葉に、モススタッフも、将来のモスバーガーのトマトは安心だな。と心強く感じました。

誘引作業に畳表をリサイクルしたヒモを使用

誘引作業に畳表をリサイクルしたヒモを使用

モス担当者との生育状況の確認

モス担当者との生育状況の確認

渡辺 亮太さんからのメッセージ

子どものころから、両親には、「うちのトマトはモスバーガーに出荷しているんだよ。」という話を聞いていました。改めて、大田原のモスバーガーで食べてみると、本当においしいトマトを使っていたんですね。うちのトマトよりもおいしかったので驚きました。
値段だけを見て、僕らみたいに手間はかかるけど味にこだわってつくっている農家さんのトマトを評価して選んでくれる人が居なくなったら、僕ら農家は衰退するだけです。これからも味にこだわったトマトをモスさんには出荷し続けたいですね。

ご家族、スタッフの皆さんと

ご家族、スタッフの皆さんと

Text by Sato