2015年9月
北海道むかわ町
鵡川蔬菜園芸振興会トマト部会
部会長 平島 道弘さん
産地だより 2015年9月
むかわ町は北海道の道央圏の南方に位置し、北海道の経済・文化の中心都市である札幌市や空の玄関の千歳市、海の玄関である苫小牧市にも近く、日高・十勝方面への交通の要衝にあります。太平洋に面しているため、夏でも蒸し暑さは少なく、冬は雪が少なく日照時間が長いこともあり、年間を通してハウスなどで栽培が可能な地域です。今月の産地だよりは北海道では初めてモスの農場として4月から栽培開始した「(株)モス・サンファームむかわ」も所属している「鵡川蔬菜園芸振興会トマト部会」をレポートします。
むかわの農業の特色
鵡川では明治26年から米の単作中心の農業でしたが、近年では畑作、野菜、花卉に畜産(肉牛)を取り入れた複合経営が主流となりました。現在では販売額の約半分が野菜類によるものです。栽培品目も多種に及び「ニラ」「春レタス」「ミズナ」「キャベツ」「カボチャ」「ホウレンソウ」「イチゴ」そして「トマト」などなど。なぜ種類が多くなったのか、どこがターゲットなのかをお聞きすると、むかわの恵まれた『輸送環境』と『ニーズに応える姿勢』、つまり苫小牧港、千歳空港、札幌に近いため、海上コンテナ、飛行機、JRによる青果物輸送に適している環境によることが分かりました。当初は関西地方のニーズをしっかり聞いて必要なものをしっかり作って届けたところから、現在では蔬菜だけで22億円の販売金額になっているそうです。
トマト選果のハードルは高く!
トマト部会長 平島 道弘さんのハウスでむかわのトマトについてたくさんのお話を伺いました。
「トマト部会は1980年、生産者4戸で設立。当時の生産量は、計23tでしたが、35周年の2014年には、生産者66戸、生産量2,827tまで拡大しました。「安全・安心」のため使用する肥料や農薬を明確にし、北海道の「イエス・クリーン」の認証も取得しています。栽培技術向上のために、1シーズンに5回の現地講習会も開催されています。また、収穫時の選果レベルを維持するため10日に一度の頻度で全員が集合し“品質規格の確認、注意事項、情報交換”が行われています。」
さらに品質や基準については、「出荷先は殆どが本州なので、負けない品質で勝負しなければなりません。消費者の方から『これどこのトマト?食べたいね』と欲しがられるトマトにするために、選果基準を特に高く設定しています。」とのことでした。
実際に選果場を視察しましたが、各ハウスからコンテナで入庫されるトマト自体の品質レベルの高さに驚きます。
「数段ハードルを高くしたことによって苦労もたくさんありましたが、信頼を確実に得ることができました」と静かに語られていました。
“基本が第一”“基本に戻る”
「このようなトマトづくりをするために、これまで栽培方法を含めていろいろなチャレンジをされてきたのではないですか?」と質問してみました。
「はい。いろいろな資材を試したり栽培方法、品種も変えてみましたが、最後に分かったことは『基本が大切。我流になると確実におかしくなって何をどうしたらよいかわからなくなる。迷ったらまず基本に戻ること。基本的なことを確実に実行して余計なことはしない。これが良いトマトをつくる最も大切なことなんです』」と平島部会長の言です。
これらのことは、トマト栽培現場、ハウスの内外部や圃場の整理・整頓・清潔さを見れば誰もがなるほどと思うのでは、と感じました。
農業者育成への積極的な取り組み
むかわの特色として、新しい農業者の育成に力をいれていることです。これまでもたくさんの方々が研修センターで2年の現地実務実習を行い、就農されています。今年も11月に3名の方が研修を修了し、来年からむかわ町内でトマトの栽培を始められます。すごいと感じたのは、研修中にトマト部会のたくさんの方々が施設に出向いて非常に丁寧に指導されていた現場を見た時でした。それも和気あいあいと。もうここから人の絆が構築されているようでした。
メッセージ
平島部会長から一言いただきました。「基本に忠実にひたすらまじめに栽培している北海道のトマトです。たくさんの方々にもっともっと味わっていただきたいと思います。」
むかわのトマトは、現在8月から秋まで北海道と関東の店舗に納品されています。お店の野菜掲示板で平島さんのお名前や“むかわ町”をさがしてぜひご賞味ください。
※(株)モス・サンファームむかわについて
・(株)モス・サンファームむかわは、夏~秋のモスのトマトを生産するために北海道に設立した農場です。むかわの良好な気候のもと、連棟式のハウスが3棟(計1,000坪)で今年(2015年)7月から出荷を開始しました。冬はレタスを栽培して、4月に“むかわの春レタス”として出荷する予定です。
Text by Tomio