2015年7月
静岡県磐田市 (株)モスファームすずなり
専務取締役 農場責任者
鈴木 崇文さん
産地だより 2015年7月
今回の産地だよりは、2014年4月より、モスバーガーと(株)鈴生の共同出資で設立された農業生産法人(株)モスファームすずなりのご紹介です。
(株)鈴生の前身である鈴木農園とモスバーガーは、2003年から静岡県内のお店にレタスを供給する協力産地として取り組みを開始。その後、長男の鈴木貴博(よしひろ)さん、次男の崇文(たかふみ)さん、三男の靖久(やすひさ)さんの3兄弟が力を合わせて会社を大きく育ててきました。
鈴木農園から農業生産法人(株)鈴生へ
鈴木農園は、祖父母の代まで遡れば、お茶やミカンを栽培する農業者でしたが、ご両親の代では一旦は普通のサラリーマンとして就職。鈴木さんたち兄弟が、孫の代で新たに新規就農者という立場で、静岡市内で農地を借りて借地農業という形でレタス、枝豆などの野菜栽培を開始しました。
しかし、山地が海沿いまで迫り、平野部が少なく農地も限られている静岡市内では、鈴木さんたちが理想とする農業経営は難しく、2000年頃から、静岡県の中部地区である焼津市、2007年には西部地区の菊川市などに、新たな農地を求めて進出をしていきました。2008年には法人化を果たし、農業生産法人(株)鈴生となりました。
冬はモスバーガーにレタスを供給し、夏はレタスを作った同じ畑にて、枝豆の栽培も行っています。レタスと枝豆の輪作は、枝豆に付いた根粒菌が土の中の栄養を豊かにする効果があります。これは、最高のレタスを作るために、モスと鈴木3兄弟が編み出した最強の輪作体系と言えます。
崇文さん 就農への決意
鈴木3兄弟、次男の崇文さんは今年で36歳。鈴木農園で働き始めたのは、お兄さんの貴博さんが就農してから2年遅れること2001年。大学では文学部で学んでいた崇文さん。まさに、畑違いの就職と言えます。
「子供のころから兄(貴博さん)と一緒に遊んでいると楽しいことがたくさんありました。そんな兄から一緒に農業をやろうと誘われた時に、兄と一緒に仕事をすれば、きっと楽しいこと、面白いことが沢山あるんじゃないかな。と思ったんですよ。」と崇文さんは言います。その後、三男の靖久さんも加わり、鈴木3兄弟として、静岡の農業界では少しずつ名を知られていく存在となっていきました。
モスバーガーからの提案
(株)鈴生を設立して3年目。静岡県のみならず、関東一円のモスバーガーにもレタスの供給を始め、冬期のレタス主力産地として力をつけてきた鈴木さんたちに、モスの担当者から、「モスバーガーと共同出資をして、新しい農業法人を立ち上げないか?」との提案がありました。
度重なる異常気象や後継者不足などで、10年先の安定供給体制をいかにするべきか悩んでいたモスバーガー側と、法人化を果たし、耕作放棄地の解消、若手農業者の育成に先進的に取り組んでいた鈴木さんたち。いよいよ機が熟し、一緒に農業法人を立ち上げようという事になりました。
「モスさんからのお誘いは、素直に嬉しかったですね。今までも、モスさんに出荷するレタスは最高のものを!と、自信をもって取り組んできました。でも、まだまだ自分たちがレタス作りを極めきれていない段階で、将来を見据えて一緒に成長して行こう。というモスさんの思いにとても共感を憶えました。」と崇文さんは言います。
モスファームすずなりの設立
2014年4月に、ついに(株)モスファームすずなりが立ち上がりました。事前準備の段階から、どこを拠点にするか?と、鈴木さんたちとモス側で協議を重ねました。その結果、静岡県磐田市西貝地区の3.6haの耕作放棄地を開墾し、ここに集荷場を建てて拠点とすることにしました。静岡県西部に位置する磐田市に本社を置き、静岡西部の耕作放棄地の解消、若手農業者の育成を目指して活動をして行く計画です。
「開墾当初は、もっとやりやすい畑の状態で引き渡しを受けると思っていましたが、大きな石がたくさん出てきて、耕耘する際にトラクターの刃を傷付けられたりと、想像とは大分違う部分もありました。畑も、粘土質の部分があったり、水が噴き出したりと苦労の連続でした。そうした環境の中では、スタッフのみんなも頑張ってくれて、一定水準のレタスや枝豆を生産する事が出来たと思っています。まだまだ、緑肥や有機質肥料の投入で、地力の再生を図っている段階ですので、今後に期待してください。」と崇文さんは言います。
台風18号の影響
モスファームすずなりを設立した2014年の秋、台風18号が静岡県に上陸。モスファームすずなりでも、レタス畑が水に浸かったり、レタスの苗が風に傷めつけられるなど、大きな被害を受けました。2014年の秋から冬にかけては、生産計画の30%も出荷できないような時期もあり、非常に厳しい船出となってしまいました。
「事前に来ることが分かっていれば完璧な対策が打てるのですが…自然災害は難しいですよね。モスさんはじめ、僕たちのレタスを待っているお客様がいる以上、苗を植えない訳には行きません。畑を被覆材で覆い風害や塩害を防ぐ、水害を防ぐために溝を掘るなど、毎回最大限の努力はしています。社長(兄の貴博さん)からは、自然災害を言い訳にするな!とよく言われています。」と崇文さんは言います。
鈴木崇文さんからのメッセージ
「モスファームの運営管理を任されている事については、非常にやりがいを感じています。美味しいものを、安心して食べられるものを、ずっと安定的に生産していきたいと思っています。畑の隅から隅まで、完璧な野菜を作りきれるように頑張りたいです。」
Text by Sato