茨城県坂東市 カルゲン会さしま 沼尻 寿一さん

茨城県坂東市 カルゲン会さしま 沼尻 寿一さん

茨城県坂東市は、茨城県西部、利根川北岸に位置し、東京の都心まで約50kmという地の利を生かし、首都圏で消費されるレタス、ハクサイ等の農業が盛んな地域です。平成17年の岩井市と猿島町の合併により生まれ、もともと関東地方全体の古い呼び名である「坂東」から取り、坂東市と名付けられたそうです。今月の産地だよりはこの地で、モスバーガーのレタスを栽培する「カルゲン会さしま」についてレポートします。

農業に適した土地

「カルゲン会さしま」がある地域は、日照量が多く比較的温暖な気候で、1年を通じて農業が出来る土地です。富士山の火山灰からできた関東ローム層の土は、地力があり、様々な野菜が栽培されています。「カルゲン会さしま」でもレタスを中心に、チンゲンサイ、ハクサイ、サニーレタス、トマト、トウモロコシなど様々な品目の野菜をグループで栽培しています。収穫の最盛期は春と秋ですが、夏や冬でも何らかの野菜の栽培は可能で、中でもチンゲンサイは1年間で7回収穫できるというから驚きです。

レタス畑が広がるエリアです。

レタス畑が広がるエリアです。

カルゲン会さしま紹介のボードです。

カルゲン会さしま紹介のボードです。

グループ設立

沼尻さんはお祖父さんの代から精米業と肥料販売業を行っており、普段から地域の農家さんとの交流がありました。当時はグループでまとまって出荷をすることはあまり多くなく、農家さんそれぞれで市場に野菜を持ち込み販売していたそうです。ただし個人のため、良いものを作っても、それをPRして販売することはできていませんでした。沼尻さんのお父さんは、そんな状況を心配し、「これからはみんなでまとまって販売していかなくては、地域の農業が廃れてしまう」という想いのもと、昭和53年に、良い野菜を栽培している農家さんを集め「カルゲン会猿島(さしま)」を設立しました。

猿島にある坂井城の物見櫓がロゴマークです。

猿島にある坂井城の物見櫓がロゴマークです。

肥料が積まれた倉庫の様子

肥料が積まれた倉庫の様子

カルゲンとは

「カルゲン」とはカルシウムの養分補給のための特殊肥料のことです。「カルゲン会さしま」ではそれを作物に施用することで良いものを作っていこうというグループです。「カルゲン」のカルシウム成分は、作物に吸収されやすい形に処理され、不足しがちなカルシウムをしっかり与えることができます。
「カルシウムが不足していない野菜は、細胞が緻密になって、食味が良くなります。また細胞壁が強くなることで、病気にもかかりにくくなるんですよ」と沼尻さんは言います。

収穫されたレタス

収穫されたレタス

カルゲンを確認、これが食味を改善させます。

カルゲンを確認、これが食味を改善させます。

土づくりのため、微生物の力を生かす

「カルゲン」と共にもう一つ、沼尻さんの栽培として特徴的なのが、「コフナ」の施用が挙げられます。「コフナ」とは様々な農作物に有用な微生物が入った土壌改良資材です。それを使用することで、土中の微生物の多様性が保たれ、有機農業の基本である土づくりの大きな助けになるそうです。
「コストはかかりますが、天候に左右されず、確実に畑では美味しくて、形や品質の良いものが出来ます。大切なのは畑でしっかりしたものを作ること、そうしないと出荷できるものと出荷できないものの選別で時間がかかり、結局、かけたコストは同じになります。良い農家さんは収穫が終わった後の畑がきれい、つまり全部出荷できたということ。これが目指す姿です」と沼尻さんは言います。

出荷を待つ箱詰めされたレタス

出荷を待つ箱詰めされたレタス

コフナを実際に確認。

コフナを実際に確認。

自分でも農業に取り組む

沼尻さんは、肥料を販売し、グループの野菜をまとめて販売する仕事をやりながら、自身でも、7年前より農場を管理し、作物の栽培に取り組んでいます。
「ここは消費地が近く、農業に適した場所であるのですが、他の仕事への選択肢が多いことから、後継者さんがいない農家さんが増えてきています。そこで、空いてくる畑を借りて自分たちで農業に取り組むようになりました」と沼尻さん。
優良な土地なのに、耕作放棄地が増えていく、今の農業が抱える問題を垣間見ますが、沼尻さんのような、土づくりへのきちんとした思いを持つ農家さん達の栽培面積が増えていくのはモスにとっては嬉しいことです。
「大変ですが、肥料や農薬などの資材の販売、野菜の生産、そして販売。農業にまつわる仕事をつなげて、一貫して行っているのはうちの強みだと思いますよ」と沼尻さんは笑います。

畑の状況を確認する沼尻さん

畑の状況を確認する沼尻さん

レタスの食味を確認。甘い!

レタスの食味を確認。甘い!

レタス畑の状況を確認します。

今年2月に関東地方を襲った大雪。各地で大きな被害をもたらしましたが、この地域ではその後の天候回復により、レタスは順調に出てきています。
「昨年の秋のレタスも、夏の暑さにより、各地でレタスが不足しましたが、うちでは例年通り出荷できていました。土づくりに取り組んできた成果が出ていると思います」と沼尻さん。
レタスの後はとうもろこしを植えて、秋のレタスに備えるそうです。カルゲンやコフナなどの資材に頼るだけでなく、輪作体系を作り、健全な土づくりに取り組む姿勢が伝わります。

収穫を待つレタス

収穫を待つレタス

レタス畑の様子

レタス畑の様子

沼尻さんからのメッセージ

沼尻さんにモスのお客さまに向けて一言頂きました。
「味にこだわって野菜を作っています。野菜の味を確かめながら食べて欲しいです!」
「カルゲン会さしま」のレタスは春と秋に東北地方のモスバーガーを中心に出荷されています。ぜひお店で味わってみてください。

野菜の味を確かめながら食べてください。

野菜の味を確かめながら食べてください。

Text by Yagi