千葉県富里市 テンアップファーム 西海 敏郎さん
富里市は千葉県北部、東京都心から約60km、北総台地のほぼ中央にあり、成田国際空港から4kmの所に位置する市です。スイカの名産地として有名な地域で、その出荷量は全国2位を誇っています。今月の産地だよりはこの地でモスのトマトを栽培するテンアップファームをレポートします。
テンアップの意味
今から約25年前、化学肥料で作られた野菜の栄養価の低下がささやかれ始めた時代に、有機肥料や、ミネラル分を畑に入れて野菜を作ることによって、栄養価の高い野菜を作ろうという目的で設立されたのがテンアップファームでした。つまりテンアップファームの「テンアップ」は「ミネラル10%アップ」という意味だそうです。 今ではトマトをはじめ、富里の特産品であるスイカやにんじん、ホウレンソウなどの様々な野菜をそのポリシーに則って栽培しています。
モスバーガーとの出会い
テンアップファームとモスの取引が始まったのは、今から約9年前、美味しいタマネギを作っている産地があると紹介され、訪問した際に、偶然トマトを見つけたのがきっかけです。トマトの品種を尋ねると、「みそら」という答え。あまり聞いたことのない品種に、これは特徴になると当時の担当者は思ったそうです。「みそら」はトマトのゼリー部分の部屋数が多く、輪切りに適した品種であり、旨味成分が多く、糖度と酸味のバランスが良い、美味しいトマトと言われています。しかし、その反面、栽培は難しく、全国でも作られている農家さんはあまり多くありません。
テンアップファームでは、今でも、その「みそら」に挑戦し、食味の良いトマトを追い求めてくれています。
代表生産者、西海さん
代表生産者の西海さんのハウスを訪問しました。西海さんは現在59歳、18歳の頃より、トマトを栽培しているというベテラン農家さんです。ハウスの中には、ちょうどモスバーガーにぴったりの大玉のトマトがごろごろとなっています。どれも少しオレンジ色、味も非常に良さそうです。 ただし秋まで収穫を続けるテンアップファームのトマトは、ここからの季節が課題になります。
「最近は夏が暑くて、人間も大変だけど、トマトも大変。樹が弱くなると病気にもかかりやすくなってしまいます」と西海さん。
西海さんのハウスでは、「みそら」の他にも病気に強い様々な品種を栽培し、対策を取っています。
「みそらが一番美味しいけど、この品種もなかなかですよ」と頼もしく西海さんは話してくれます。
テンアップ農法の特徴
富里市は、台地の上にあり、地下水位が低い土地で、畑の水分コントロールがしやすい地域です。その地域特性を生かして、テンアップファームでは土中の水分量を計るメーターを使用し、トマトの起源である乾燥地の環境を再現しています。実際に西海さんの畑の土はサラサラ。テンアップファームトマトのコクのある味はこの水分管理から生まれています。もう一つの特徴的なのは、連続摘芯栽培への挑戦です。
トマトは通常、メインの枝である主枝(しゅし)を伸ばし、脇芽である側枝(そくし)は、大きくなる前に取ってしまいます。しかしテンアップファームでは、主枝が実をつけた段階で、芯を摘み、枝を捻って、側枝を新たな主枝として育てていきます。連続摘芯栽培は、このような主枝更新を繰り返すことにより、葉っぱの数が多くなり、根張りが良くなり、大玉で味の良いトマトが出来る栽培方法と言われています。
管理が難しい為、グループとしてこの栽培方法に取り組んでいるのは、数多いモスの協力産地のなかでは、ここだけになります。
「連続摘芯は大変ですが、面白味がありますよ、実際に収量もあがり、味も良くなります」と西海さんは言います。
ベジポートの存在
テンアップファームは2007年に株式会社ニチレイフーズと組んで、ベジポートという組合を立ち上げました。千葉県旭市にあるベジポートには、選果場とジュース加工工場があり、トマトはそこで箱詰めされて、モスに出荷されて行きます。ベジポートの特徴は全量集荷という点です。ベジポートでは選果を行い、規格外になった物は、全てジュースに加工していきます。生産者さん達は収穫したトマトの規格を気にすることなく、全量出荷できることで、収入が安定するだけでなく、より栽培に集中することが出来ます。
テンアップの生産者さん達が様々な難しい栽培に挑戦できるその要因の一つに、このベジポートの存在があるのだとモスの担当者は感じています。
最後に一言
最後に西海さんにお客さまにむけて一言頂きました。「お客さまを裏切って、不味い物は作れません。これからもみんなが喜ぶ美味しいトマトを目標に栽培していきます!」
テンアップファームのトマトは6月〜11月まで関東地方のモスバーガーに出荷されています。店舗で是非その味を確かめてみて下さい!
Text by Yagi