福岡県朝倉市 JA筑前あさくら 冬春トマト部会 部会長 今福 英治さん
モスのアグリ担当が福岡空港に降り立ったのは11月の上旬。今回の目的は、福岡県朝倉市にあるJA筑前あさくら冬春トマト部会の産地確認の為です。
JA筑前あさくら冬春トマト部会は現在、部会員17名、およそ5.4haの規模にて、味にこだわったトマト栽培に取り組んでいる団体です。
環境に優しいエコカーをレンタルし、一路南東へ40kmに位置する朝倉市へ。朝倉市は、平成18年3月に、甘木市、朝倉町、杷木町の1市2町が合併して誕生した市です。人口は約5万7千人。市中心部から北東約8kmの位置には、旧城下町の秋月地区があり、「筑前の小京都」と呼ばれ、観光地となっています。
「感激73」との出会い
モスのアグリ担当が、佐賀県内のとある産地を訪問していた際に、あるトマトの品種に出会いました。その名も「感激73」。「大げさな名前だな―。」と半信半疑食べてみたところ、甘みと酸味のバランスが絶妙で、まさに、モスバーガーに適した品種だったのです。
この品種を他に作っている産地は無いものかと調べたところ、福岡県のJA筑前あさくらで栽培しているという情報を得たのでした。早速、1年前にJA筑前あさくらを訪問して、部会長の今福さんらと取組み開始に向けた協議を行い、今年の2月から、関東地区のモスバーガーに出荷を開始する事となったのでした。
朝倉市の食材探訪
食に関わる会社であるモスバーガー、モスのアグリ担当は、地方に来ると必ずその土地のものを食べる事を心がけています。今回驚いたのは「ちゃんぽん」の食べ方。ふと見ると、一緒に食事をしていた今福さんが、ソースをちゃんぽんにかけているではないですか!「ちゃんぽんにソースは、ここらでは当たり前だよ。やってみなよ。」と勧められるままにちゃんぽんにソースをドバッと・・・。ソースの酸味とコクが、ちゃんぽんの味を引き締めて、これが意外にも癖になる味で驚きです。
さらに、日本中、いや、世界中で朝倉市の黄金川にだけしか生息していない。という「川茸のり」という淡水で育った海苔の養殖場を視察。学名は、「スイゼンジノリ」という名前で、江戸時代には秋月藩が養殖を保護し、徳川家への献上品として送っていたという由緒正しい郷土食材なのです。モスのスタッフも試食しましたが、プルプルとした不思議な食感なのにしっかりと海苔の味がするという最高の珍味でした。
今福さんのトマトハウスを訪問
さて、いよいよ本題です。JA筑前あさくら 冬春トマト部会 部会長の今福さんは、現在52歳。代々の農家で、高校卒業と同時に就農をしたそうです。就農と同時にトマト作りを始めたので、すでに35年もトマト作りに関わっているというベテランの農家さんです。「感激73の特徴は、玉が硬めで味が良いことですね。今年で作り始めて8年目ですが、年々収穫量が増えています。以前作っていた品種は、肥料と水の管理が難しく、黒すじ病という障害が出やすい為に、頭を痛めていました。感激73は、この黒すじ病が出難い為、肥料も水も心配せずに与えられる。そして味が良い。この土地に適した品種だったんですよ。」と今福さんは言います。
今年のトマトの見通しは?
今年のトマトの作柄を、今福さんに聞いてみました。
「10月下旬の定植の時期から高温傾向が続いていますね。晴れの日はいいのですが、雨の日の気温が高すぎるのが問題ですね。夜の温度が十分に下がらないから、トマトの樹が伸び過ぎた状態に生育してしまっています。こうなると、トマトの葉や茎が軟弱に育ってしまい、病気にかかりやすいというリスクがあります。」
「20年前と比べると、1ヵ月くらい気候がずれてきているという印象ですね。今の時期(11月)は夜温が冷えた方が、トマトの樹が締まっていいんですよ。はやく夜の温度が10℃を切るくらいになってほしいですね。」と今福さんは言います。
「ただ樹が伸びた分、葉と葉の間がスッキリとしていて、日当たりも風通しもよく、逆に良いかもしれないですね。今からの天気にもよりますが、十分挽回できるレベルですよ。」と心強い言葉を頂き、モスのアグリ担当も一安心です。
トマト栽培に適した土地
JA筑前あさくらのトマトハウスのほとんどは、地域を流れる佐田川(さだがわ)の流域沿いに点在しています。その為、土質は砂状土で砂利混じり。決して、肥沃とは言えない土地です。一見、農業には不利な条件と思われがちですが、トマトの原産地であるアンデス山脈の高冷地も、砂利混じりの荒れ地のような環境という事もあり、こうした肥料抜けも水抜けもいい土質というのは、実はトマト栽培に適した条件なのです。
今福さんのハウスの中に入ると、一般のトマト農家が畝に張るビニールマルチが張っていない事に気付きました。「ビニールマルチは後から張るんですよ。定植1ヵ月後が目安ですね。根が深く張るのを待って、それからマルチを張るようにしています。定植の時からマルチを張ると、どうしても上根になってしまうからね。」と今福さんは言います。作業の効率ではなく、美味しさを追い求めた結果の職人技です。
土づくりへのこだわり
今福さんの土作りへのこだわりを伺います。
「毎年、トマトの栽培が終わると、薬剤は使わずに、太陽熱による土壌消毒を行います。夏の暑い時期に、土壌を耕して水を入れたら、地温が60℃くらいまで上がるんですよ。これを10日以上続けると、薬剤による土壌消毒をしなくても、同じ以上の効果が得られます。
薬剤だと、土中の良い菌も、トマトに悪さをする菌もすべて殺菌してしまいますからね。すべての菌を殺さずに、良い菌は残す。これが太陽熱消毒の最大の効果ですね。」
さらに、こだわっているのが自家製の堆肥。
「バークたい肥に米ぬか、カニがらを入れて、麦わらと混ぜて発酵させます。畜産糞尿は一切入れません。定期的に切り返しを行い、その都度、米ぬかを入れて発酵を促進させます。およそ1年掛けて、翌年の土づくりに使用する堆肥を作り上げています。」と今福さん。
こうした地道な苦労が、美味しいトマト作りに繋がっているのだと感じます。
モスのお客さまへメッセージ
最後にモスバーガーに来て下さるお客さまにむけてのメッセージを頂きました。
今福さん「東京のモスのお店で、自分の名前が出ているという事を聞いて、私自身が感激をしているところです。非常に嬉しい事だと思います。今年も美味しいトマトを作りますので、みなさんご期待下さい」
小島さん「筑前あさくらのトマトは、1月から5月いっぱいまで出荷期間があります。いつでも自信をもって美味しいトマトを出荷していますが、特に味がのってくるのは3~4月頃ですね。私たちのトマトを是非お店に食べに来て下さい」
JA担当の堤さん「モスは、味で勝負している会社というイメージがあるので、モスで我々のトマトを使ってもらえるのは光栄ですね。「昔ながらの味がするトマト」という定評がある筑前あさくらのトマトに、どうぞご期待下さい」
JA筑前あさくらのトマトは、1月~5月の間、関東甲信越静岡地区のモスバーガーに出荷予定です。是非お店で、今福さん達のトマトで作ったモスバーガーを味わって下さい!