産地だより 2017年10月

2017年10月
千葉県富里市
若狭農場(トマト)
代表生産者 若狭 正明さん

今回の産地だよりは、モスの協力農家さんとして13年の取り組みの歴史がある、千葉県富里市の若狭農場代表、若狭 正明さんをご紹介します。
最近は「50年に一度」という言葉がよく出てきますが、猛暑、ゲリラ豪雨、巨大台風など、年を追うごとに不安定になる気候の影響で、抑制栽培と呼ばれる9月~11月に収穫されるトマトの生産量は年々不安定になっています。そんな難しい抑制栽培のトマトにあえて挑み続ける、若狭さんのトマト作りに迫ってみました。

若狭さんの歩み

若狭さんは現在52歳。経営面積は約5haで、トマト、スイカ、人参、馬鈴薯などの作物を、1年を通じて栽培しています。この地域の代々の農家で、生まれは成田だったそうです。
「生まれは成田空港の滑走路の上だったんですよね。空港が出来るということになり、5歳の時に富里の方に移ってきたんですよ。小さなころの記録はもうほとんどないですけどね。」
高校を出てすぐに就農を決意した若狭さん。「一度は都会で就職を…」と考える人も多いですが、そこに迷いはなかったと言います。「親の農業経営がとても上手く行っていたのを見ていたので、実家を継ぐは当然のことという思いでしたね。」と若狭さんは言います。

若狭農場の全景

若狭農場の全景

栽培中のトマトハウス

栽培中のトマトハウス

モスバーガーとの出会い

今から13年前。モスの仕入担当スタッフが、毎年仕入に苦戦している9月~11月のトマトの対策として、千葉県での新規産地の開拓を進めていました。その際に、地元の農業事情に明るい有識者の方からの紹介を受けて、若狭さんと出会うことができました。以来、毎年9月~11月に、モスの関東地区のお店を中心に、土作りにこだわった食味のよいトマトを継続的に供給していただいています。
「モスの富里店とか、八街店にはよく行きますよ。自分の名前をお店で見たこともあります。奥さんのところに野菜掲示板の写真が送られてきたりと、反響はありますね。」と若狭さん。他県に住む同級生からも「富里市の若狭さん」とモスのお店で名前が出ていたぞ。と言われたこともあるそうです。「地元の名前が出て、地元の友達が喜んでくれることは、嬉しいし、励みになりますね。」と若狭さんは言います。

3月訪問の時はスイカ畑でした。

3月訪問の時はスイカ畑でした。

10月に収穫予定のトマト

10月に収穫予定のトマト

スイカとトマトを同じ畑で栽培?

若狭さんの農業経営の中心となっているのが、富里市の名産品であるスイカと、そのあとに同じ畑で栽培するトマトの栽培です。同じ畑で周期的に違う作物を作ることを「輪作」(りんさく)と言い、農家さんでは一般的に行われる手法です。
「スイカとトマトの輪作は農作業も重ならずに相性がいいんですよ。スイカ栽培で畑に残った肥料を、次作のトマト栽培で活用することが出来ます。この地域では昔から取り組まれている作型ですね。」と若狭さんは言います。
1年間を簡単に説明すると、スイカの種を1月に撒き、3月にビニールハウスの中に苗を植えます。その後、スイカの収穫を5月~6月に行います。それと同時進行で、6月にトマトの種を撒き、7月にスイカが終わった後の同じハウスにトマトの苗を植えます。そして、トマトの収穫が9月~11月いっぱい。12月にハウスの片付けを行うという1年のサイクルになっています。若狭農場では、まさに1年間休みなく様々な農作業が行われています。

モスのスタッフとトマトの出来栄えを確認

モスのスタッフとトマトの出来栄えを確認

トマトの味をチェック!

トマトの味をチェック!

厳しい気象条件

9月~11月に収穫する抑制トマトは、7月に苗を植え、千葉県の猛暑を乗り越えて樹を生育させるという非常に難しい作型です。さらに、ここ最近は、想定以上の台風や猛暑などに襲われ、安定的な栽培がより一層難しくなっています。
「今年は7月がものすごい猛暑で、その後一転、冷夏になりました。その影響で、トマトの実の数が少なく、色周りもよくない。という影響が出ています。その代わり、暑さが抑えられたことにより、アザミウマなどの害虫の発生は少なかったですね。」と若狭さん。
「天気が冷夏の方がトマト作りにはいいのですか?」とのモススタッフからの問いには、「いや、富里は北総用水という利根川の水が豊富なので、やはり暑い夏の方がやりやすいですね。太陽が出ないことには光合成も出来ないから樹の元気も出ない。やはり夏はしっかりと暑い方がいいんですよ。」と若狭さんは言います。

新品種の「ひなた」を栽培中

新品種の「ひなた」を栽培中

奥様のるり子さん。トマトの管理作業中です。

奥様のるり子さん。トマトの管理作業中です。

台風による被害

ここ最近が一番厳しかったのは、2016年8月下旬に千葉県を襲った台風9号による被害でした。この台風は、東京湾から千葉県に直接上陸してきたため、非常に勢力が強く、千葉県内でも36億円近い農業被害が出ました。若狭さんの農場も、この台風の被害を大きく受けてしまいました。
「風速が40mを越えたのは初めてでした。目の前でハウスがつぶれるのを見ていました。バリバリバリッ!とすごい音で横に潰されてしまった。あの時の風はすごかった…。」と若狭さんは振り返ります。
この時は、台風の風がビニールハウスの真横にあたる東側から吹いてしまったので、風圧に耐えられなかったそうです。富里地域の農家さんは、農地の西側に防風林を植えている家が多いので、西からの風には強いそうですが、東側は、朝日が当たる側なので、通常は防風林を植えないそうです。こればかりは防ぎようがなく、周辺の農家さんのハウスは、軒並み被害を受けてしまいました。「農業は自然と隣り合わせの仕事なのだ…。」と、モスのスタッフも改めて厳しさを認識しました。

人参もたくさん作っています。

人参もたくさん作っています。

ご自慢のコーヒーかすと籾殻の堆肥の熟成度合いを確認

ご自慢のコーヒーかすと籾殻の堆肥の熟成度合いを確認

自家製堆肥がおいしさの秘密

若狭農場の畑の片隅には、茶色い小山が盛られていることに気付きます。これは、若狭さんご自慢の自家製堆肥です。若狭さんの堆肥は、籾殻とコーヒーかすが主原料です。
籾殻は、銘柄米として有名な「多古米」の籾殻を知り合いの農家さんから貰っています。
コーヒーかすは、近隣のコーヒー工場から大量に出るかすを、定期的に受け入れています。
「堆肥と肥料には、富里の農家はみな熱心なんだよね。」と若狭さんは言います。
2か月に一回は、堆肥の上と下を入れ替える切り返しを行って酸素を供給し、発酵を促します。こうした手入れを1年間続けて、やっと堆肥として畑に撒くことが出来るようになります。「収穫した分の繊維質は土に戻す。これがおいしい野菜を作る基本ですね。」と若狭さんは言います。

堆肥の熟成度合いを確認

堆肥の熟成度合いを確認

最後に若狭さんから一言

「これからも、土作りからこだわったおいしいトマトをモスバーガーにお届けし続けていきたいですね。関東地区のモスの秋の風物詩として、お店の掲示板で若狭農場のトマトを探して貰えれば嬉しいです。」

Text by Sato