産地だより 2017年3月

2017年3月
大分県玖珠郡九重町
愛彩ファーム九重(黄パプリカ)
農場長 工藤 隆浩さん

今回の産地だよりは、大分県玖珠郡九重町でパプリカを栽培する協力農家さんの愛彩ファーム九重さんをレポートします。
産地名である愛彩とは、「愛」、愛と人間力、「彩」、彩り鮮やかな創造力とセンスが満ち溢れるファーム(会社)でありたいという思いが込められているそうです。
また、愛彩をアルファベットで表記した際にも伝えたいファーム(会社)のコンセプトがイニシャルにも込められており、「愛:Ai」の頭文字「A」はAgriculture(農業)、「彩:Sai」の頭文字「S」はSustainable(持続可能)であり、持続可能な農業に取り組むファーム(会社)であるとのことです。
それでは、愛、そして彩り鮮やかな創造力とセンスに満ち溢れて黄パプリカを栽培する愛彩ファーム九重さんのレポートを開始します。

愛彩ファーム九重設立の秘話とは?

まず始めに、愛彩ファーム九重の設立について、タカフジグループ・愛彩ファーム九重の松尾専務にお話を聞いてみました。
愛彩ファーム九重は「大型プラント工場、大型発電所、水処理など、産業用および環境用のプラント建設を得意とする株式会社タカフジを経営母体として、2016年に、2号目のパプリカハウスを設立しました。
1号目のパプリカハウスは、A重油(化石燃料を燃料とした、農業、漁業で用いられる)ボイラーを使用した温室で、パプリカを栽培していましたが、伸び続ける国産パプリカの需要と比例して、年々高騰する化石燃料の価格に悩まされ、売上に対するエネルギーコストは上昇し、また、夏場は、地球温暖化による野菜の高温障害などで夏の栽培を断念しました。
 これらの課題を乗り越え、そして国産パプリカの生産をより高効率に、且つ持続可能な農業生産拠点で在り続けるために、自分たちの経験、技術、知恵を振り絞り、自社設計のエネルギーコントロールシステムを開発、導入したのが愛彩ファーム九重なのです。」

愛彩ファームエントランス

愛彩ファームエントランス

愛彩ファーム九重

愛彩ファーム九重

エネルギーコントロールシステムとは?

次に、エネルギーコントロールシステムについて、愛彩ファーム九重の松尾専務にお話を聞いてみました。
「エネルギーコントロールシステムは、大分県産のクリーンエネルギー、かつCO2排出のない環境に優しい「地熱:温泉熱」を有効活用するものです。化石燃料からの脱却に取り組み、パプリカが本当に必要とするハウス内の温度を、化石燃料を使用せず存分にコントロールできる仕組みになっています。
 また標高700mに位置する愛彩ファーム九重は、夏も比較的涼しく、寒暖の差を利用した栽培、秋と冬は地熱暖房で周年栽培(1年中を通して栽培出荷)が可能な生産拠点であり、農業におけるスタッフの周年雇用の創出も実現できています。」と、エネルギー資源をベースとした、安全安心な食資源、水資源のみならず、人材資源についても努力をしている企業姿勢に感銘を受けました。

地熱(温泉熱)

地熱(温泉熱)

地熱利用型熱交換システム

地熱利用型熱交換システム

環境制御とパプリカ生産その1(複合環境制御システム)

次に、環境制御とパプリカ生産の関係について、農場長の工藤さんにお話を聞いてみました。
「野菜の中でも、特に繊細なパプリカ。他の野菜のようにストレスを与える栽培方法には耐えられず、きめ細かい環境制御と手入れを必要とする野菜です。
愛彩ファーム九重で導入している複合環境制御システムは、ハウス外の天気、日射量、光の強さ、風向風速、雨量などを観測したうえで、ハウス内を常にパプリカが快適に生育できる環境値に近づけるように、ハウス内温度、ハウス内湿度、潅水の回数や量、そして、光合成促進のためのハウス内CO2濃度などを全設備と連動したコンピューターが制御できる仕様になっています。
ただし、システムが全てを栽培管理してくれるわけではなく、設定する環境値は、農場長である私と、エリア毎のハウスの栽培リーダーが算出し、設定値に対してハウス内が適正に環境制御できているかを常に緊張感を持ち続けながら管理しています。」と話してくれました。農場長である工藤さんからのお話を聞く限り、どんな最先端のシステムを導入しても、最後は人なのだ、と栽培に対する情熱と愛情が伝わりました。

気象データを説明する工藤農場長

気象データを説明する工藤農場長

地熱エネルギーコントロール画面

地熱エネルギーコントロール画面

環境制御とパプリカ生産その2(一次育苗)

引き続き、農場長の工藤さんに、一次育苗についてお話を聞いてみました。
「愛彩ファーム九重では、苗づくりの段階からパプリカ栽培に携わっています。種を蒔き(播種)、発芽させて強い若苗ができるまでの期間は、閉鎖型の環境制御装置(発芽装置)を使って、一次育苗を行います。この装置を使用することで、天候や季節に左右されず、比較的苗揃いがよく、強い苗を育てることが可能になります。
 愛彩ファーム九重で取り扱うパプリカの苗数は約80,000株。約14日間(1回に約40,000株×2)を環境制御装置(発芽装置)の中で、一次育苗させます。」

発芽装置による一次育苗

発芽装置による一次育苗

発芽装置で育てられた苗

発芽装置で育てられた苗

パプリカ開花

パプリカ開花

収穫前のパプリカ

収穫前のパプリカ

環境制御とパプリカ生産その3(二次育苗)

最後に、二次育苗について、農場長の工藤さんにお話を聞いてみました。
工藤さん曰く、「前述のように、種から一次育苗した苗を更に二次育苗するための育苗室(約3,200平方メートル)があります。一次育苗期間を終了した約3cmの苗を約20cmから25cmの苗に育てるために、育苗室を使用します。
 一般的にパプリカの育苗には、収穫を迎えるまでに、4ヵ月から4.5ヵ月の期間を要します。また、通常は、購入した苗を使用するか、収穫する栽培室の中で育苗することが多いために、実際に出荷できる期間は、7ヵ月間程度です。
 愛彩ファーム九重では、一次育苗、二次育苗ができる設備が、栽培室とは別区画(同ハウス内)にあるため、栽培と出荷ができる期間が約9.5ヵ月間と長くなります。」と、話してくれました。
 また、品質の面でも、安定的に、新鮮なパプリカを出荷できるよう心掛けた管理も行っているそうです。

二次育苗(プールベンチ)設備

二次育苗(プールベンチ)設備

二次育苗で育てられた苗

二次育苗で育てられた苗

パプリカの生育状況を説明する工藤農場長

パプリカの生育状況を説明する工藤農場長

パプリカの選果基準を説明する大久保主任

パプリカの選果基準を説明する大久保主任

工藤さんからのメッセージ

工藤農場長にモスバーガーのお客さまに向けて一言いただきました。
「愛彩ファーム九重では、環境制御システムとクリーンエネルギー(地熱:温泉熱)コントロールシステムを導入し、ハウス内をパプリカにとって最適な環境にすることで、一年中お客さまに新鮮なパプリカをお届けできるように取り組んでいます。
でも、環境設定はシステムで制御できるものの、新鮮で、高品質なパプリカを育てるために、30分毎にシステムの環境値の確認(多い時は5分毎)を行い、実際に植物の葉、根、茎、果実の状態を目で見て、手に取って確認しています。
ファームのスタッフ全員が、毎日パプリカと向き合いながら愛情を込めて栽培をしていますので、ぜひ、モスバーガーのお店でお召しあがりください!!」

生産者の皆さん

生産者の皆さん

Text by Osako