産地だより 2017年2月

2017年2月
広島県大崎上島町
亀田農園(トマト)
亀田 英壮さん

今回の産地だよりは、広島県大崎上島町でトマトを栽培している亀田農園 亀田英壮さんをレポートします。
広島県大崎上島町は、本土からフェリーで30分、瀬戸内海のほぼ中央に位置している大崎上島にある町です。
島の最高峰、神峰の頂上からは大小115の島が見渡せ、瀬戸の多島美を満喫できる風光明媚なところです。
瀬戸内海の温暖少雨な気候で年間を通して過ごしやすいこの地で、亀田さんは「亀ちゃんトマト」としてトマトの栽培・販売をしています。

フェリーから見える上島1

フェリーから見える上島1

フェリーから見える上島2

フェリーから見える上島2

今年の状況は?

「今年は今のところ順調ですね。」と亀田さん。
1~3段目に実がなると栄養分がそこに取られて樹が弱りがちです。すると次の4段、5段目の花が弱々しくなって落ちてしまい収穫量も減少してしまいます。まして、今年は9月から曇天長雨が続くなどあまり天候に恵まれていませんでした。
実は、昨年の1~2月の曇天続きで、温度の確保ができておらず、結果3月の収穫量が落ち込んでしまいました。この反省を活かし、温度や湿度を極力一定に保つようにしたそうです。
また、温度が低いときはボイラーを炊いてハウスの温度を調整していますが、念には念を入れて、このボイラーが万が一故障した場合でも灯油の燃焼でCO2を発生する装置が稼働することによって、最低限の温度が確保できるようにしているそうです。
亀田さんのハウスでは5段目まで力強い花が咲いていました。

収穫間際のトマト。

収穫間際のトマト。

ボイラーが稼働しなかったとき、最低限の温度を確保するため稼働します。

ボイラーが稼働しなかったとき、最低限の温度を確保するため稼働します。

おいしいトマトの条件

亀田さんのトマトのヘタまわりには濃い緑が出ています。これはグリーンベースといって、これが出ているトマトは味がのっておいしくなるそうです。
「普通のトマトと糖度が2~3度違う」と亀田さんは自信を見せます。
そうしたトマトを育てるため、亀田さんは、トマト本来の味がぶれないよう接ぎ木をせずに自根で栽培を行っています。
接ぎ木とは違う品種(あるいは違う品目)の上部と下部をつなぎ合わせる栽培技術です。長年にわたって同じ作物を栽培すると、土壌に病原菌が蓄積するなどして作物の育ちが悪くなる連作障害になってしまいます。これを回避するため、異なる作物を栽培したり(輪作)、トマトでは病気に強い品種の下部とおいしい品種の上部を接ぎ合わせる接ぎ木栽培を行うのが一般的です。
亀田農園では9月の中旬に苗植えしてから翌年7月まで収穫する長期栽培を行っており、1年のほとんどトマトが植えられている状態です。しかも父親の代からトマト栽培を始めていますから30年も経ちます。連作障害が出ても全く不思議ではありません。
ところが、亀田さんの畑では連作障害はでていません。いったいなぜでしょうか?
その理由は土づくりにあるといいます。

ヘタまわりにくっきりとした緑(グリーンベース)が出ています。

ヘタまわりにくっきりとした緑(グリーンベース)が出ています。

熟度が進むとグリーンベースは消え、真っ赤になります。

熟度が進むとグリーンベースは消え、真っ赤になります。

すべては土づくりから

「基本的には土が健康だったら病気も少ない。去年はほとんど病気の発生はなかった。」と亀田さんはいいます。
亀田さんは、河川敷に生えているカヤを自分たちで大量に刈りこんできたり、落ち葉を集めてきて、それを畑に鋤きこみ、納豆菌をいれて分解させて、土づくりを行っているのだそうです。
驚くことに鋤きこんだ大量のカヤや落ち葉は1か月くらいで分解します。またカヤは茎が空洞になっているので、わずかに残ったカヤのおかげで土中の通気性も改善されます。そうやって手間暇をかけて土づくりを行うことでおいしいトマトを育てることができるのです。

昨年の夏に施されたカヤ。ほとんどは分解されています。

昨年の夏に施されたカヤ。ほとんどは分解されています。

通路にもカヤが敷かれています。栽培終了後これも土づくりのため鋤きこまれます。

通路にもカヤが敷かれています。栽培終了後これも土づくりのため鋤きこまれます。

「毎年同じようにできるわけではないので研究心をもって取り組んで、「亀ちゃんトマト」が、広島はもちろん日本で一番おいしいという評価をもらえることを目指したい」と亀田さんはいいます。
亀田農園の「亀ちゃんトマト」は、1月から7月まで中国地方のモスバーガーに出荷されます。
亀田さん、貴重なお話ありがとうございました。これからもおいしいトマトをよろしくお願いします。

By harumaki