青森県黒石市 野菜くらぶ青森 レタス 代表生産者 葛西 龍文さん(左) サニーレタス 代表生産者 成田 真理乃さん(右)

青森県黒石市 野菜くらぶ青森 レタス 代表生産者 葛西 龍文さん(左) サニーレタス 代表生産者 成田 真理乃さん(右)

「野菜くらぶ青森」がある青森県黒石市の沖揚平は八甲田山の山麓、標高750mにあり、冬は雪に閉ざされ、陸の孤島となってしまう日本最北端の山岳地帯です。ただその冷涼な気候を生かして、夏場は高原野菜の産地となっています。今月の産地だよりは今シーズンも出荷が始まった「野菜くらぶ青森」を紹介します。

標高750mの高原、八甲田山の山麓でレタスを栽培しています

標高750mの高原、八甲田山の山麓でレタスを栽培しています

モスの担当者の一言がきっかけ

この産地だよりに度々登場するモスの協力産地「野菜くらぶ」は、群馬県昭和村を本拠地とする農業生産法人で、毎年夏場のモスのトマト・レタス・キャベツ等を栽培しています。昭和村がある赤城高原は、当然夏でも涼しいですが、温暖化の影響で、年々どうしてもレタスが作りにくい時期が増えていることが、問題となってきました。しかしモスは1年間同じ品質のレタスを求めます。当時のモスの担当者は「野菜くらぶさんは個々の生産者さん達は良く頑張っているけど、会社として何か安定供給に努力しているのですか?」という疑問をぶつけました。
そこで「野菜くらぶ」は、適地適作という考え方のもと「会社としてもっと涼しいところで、レタス栽培ができないか検討しよう」と考えました。日本地図を手に全国の産地を回る毎日、そこで見つかったのが青森県黒石市の沖揚平でした。

収穫を待つレタス

収穫を待つレタス

綺麗に植えられたサニーレタス畑

綺麗に植えられたサニーレタス畑

野菜くらぶ青森の誕生

沖揚平は標高750m、緯度を考慮すると標高1000mを超える長野県のレタス産地と匹敵する冷涼な気候で、群馬が雨なら青森は晴れと最適な条件を備えていました。ただ見知らぬ土地へのアポなし突撃、話を聞いてくれる人は僅かでした。そんな時、レタス生産者の葛西さんに出会います。「もともと有機農業をやっていたこともあって、下地はあったんです。そんな中環境に配慮した栽培や、顔が見えるお客さまとの契約販売など、従来の農業と違う野菜くらぶの考え方に興味を持ちましたね」と葛西さん。今から約10年前、ここから野菜くらぶ青森は始まりました。

レタスの代表生産者葛西さん

レタスの代表生産者葛西さん

集荷場で野菜くらぶ青森の歴史を伺います

集荷場で野菜くらぶ青森の歴史を伺います

野菜くらぶ青森メンバー紹介

野菜くらぶの生産者は現在4名。レタスの代表生産者の葛西さんと、サニーレタス代表生産者の成田さんは、兄妹で戦後の沖揚平開拓団の2世です。お父さんの代からこの地を開拓し、農業を営み、土地を守り続けています。残りの2人は「野菜くらぶ」独立支援プログラムから生まれた新規就農者の山田さんと矢口さんです。山田さんは第一期生、矢口さんは三期生、お互いに群馬で研修したのちに独立し、青森に移住して本格的な農業を始めました。長年その土地を開拓してきた生産者と若き新規就農者、なんとも対照的な組み合わせです。

新規就農者の二人 矢口さん(左)と山田さん(右)

新規就農者の二人
矢口さん(左)と山田さん(右)

野菜くらぶの独立支援プログラム

山田さんと矢口さんがそれぞれ会社を持ち、独立するきっかけとなった「独立支援プログラム」。今では「野菜くらぶ」の代表的な取り組みの一つになっています。平成13年に山田さんが一期生としてスタートしてから、すでに多くのモスの生産者が誕生しています。このプログラムの優れている点は、独立後のフォローです。取材をした日も群馬のレタス生産者の竹之内信一さんが青森を訪れ、朝から一緒に収穫作業を手伝い、山田さんや矢口さんの畑の状態を確認し栽培のアドバイスを行っていました。今は1ヶ月に1回程度、群馬の生産者のだれかが、自分の農作業の合間を縫って、山田さんと矢口さんに会いにきているそうです。見知らぬ土地に来て新たに農業を始めた2人にとっては、非常に心強いことだと感じます。

竹之内さん(中央)からアドバイスを受ける山田さん

竹之内さん(中央)からアドバイスを受ける山田さん

先輩農家さんの厳しい目でレタスをチェックします

先輩農家さんの厳しい目でレタスをチェックします

若手生産者の成長がうれしい!

山田さんは青森9年目、矢口さんは3年目、毎年様々な課題にぶつかりながら農業を行っています。東京の出荷センターに着いたレタスの品質について、しばしば電話をして議論することもあります。しかし一緒に畑をまわり、レタスを確認し、品種や栽培管理について話を聞いていると、少しずつレベルアップしているのが伝わります。
昨年の冬、モスの担当者は山田さんと一緒に、モスのレタス生産者の先輩である宮城県石巻市の推野さんの畑を訪問しました。推野さんのレタスは冬にビニールハウス内で栽培を行うため、青森の栽培法とかなり違いますが、山田さんは「それでも勉強になります!」と青森から駆けつけてくれました。山田さんは野菜くらぶの先輩生産者だけでなく、モスの先輩生産者とも積極的に交流して技術を吸収しています。若い生産者の成長をその傍らで感じることが出来るのは、モスの野菜担当者の醍醐味です。

昨年の冬、推野さんのレタス畑を訪問

昨年の冬、推野さんのレタス畑を訪問

山田さんと推野さん、先輩生産者の技術を学びます!

山田さんと推野さん、先輩生産者の技術を学びます!

沖揚平での農業の厳しさ

青森の沖揚平の農業の厳しさを葛西さんに伺うと、「農業が出来る期間の短さ」という答えが返ってきました。冬は3mを超える雪に閉ざされてしまうエリアです、いくら夏に品質の良い高原野菜が収穫できたとしても、他の地域に比べ農業が出来る期間は圧倒的に短いことになります。短いぶん、一つの失敗から受ける影響は大きくなります。
「最近はあんまりないから助かっているけど、冷夏になっちゃうとひどいよ、全然育たず何にもできないんだから」と葛西さんは笑いますが、こういう厳しい状況下でも、野菜を栽培してくれる人がいるから、私達は一年中ハンバーガーを販売することが出来るんだと改めて認識します。

この集荷場が冬になると・・・・

この集荷場が冬になると・・・・

こんな状態になってしまいます

こんな状態になってしまいます

最後に一言

最後にモスバーガーのお客さまへ葛西さんからメッセージをもらいました。
「自然の厳しい沖揚平で一生懸命、美味しい野菜を作っています、是非お店で食べて見て下さい」。

「野菜くらぶ青森」のレタス・サニーレタスは7月~9月の間、関東と東北の店舗に出荷しています。是非お店の黒板で4名の名前を探してみてください。

野菜くらぶ青森メンバー集合!

野菜くらぶ青森メンバー集合!

Text by Yagi