奈良県天理市JAならけん 合場トマト出荷組合 代表 山中 重好さん(左) 副代表 柳川 公成さん(右)

奈良県天理市JAならけん 合場トマト出荷組合 代表 山中 重好さん(左) 副代表 柳川 公成さん(右)

奈良県と言えば、奈良の大仏、法隆寺、石舞台…と、観光地として有名ですが、実は、関西圏の消費地に農産物を供給する、農産物の産地としての顔も持っているのです。奈良県のデータによると…
・都道府県で、柿の生産量が第2位、梅の生産量が第3位、お茶が第6位、イチゴが12位の生産量。
・山の傾斜をうまく利用して、五條・吉野地域では、柿や梅などの果樹が、奈良市東部(旧月ヶ瀬村、都祁村を 含む)や山添村ではお茶の栽培が盛んに行われている。など様々な情報が出てきます。
「奈良=観光地」としか思っていなかったモススタッフは、反省しながら今回の取材先である、天理市のJAならけん合場トマト部会に向かいました。

奈良県天理市。県の北部に位置し、東西に西名阪自動車道や名阪国道が貫き、南北軸と交わる交通の要衝です。JAならけんの事務所に到着したモススタッフは、JA職員の方と合流して、いざ、山中さんと柳川さんの待つトマトハウスへ!

山中さんのトマトハウス

山中さんのトマトハウス

代表の山中さん

代表の山中さん

合場トマト組合が出来たのは40年近く前。今は6人のメンバーで取り組んでいますが、以前は町内の半分くらいの人がトマトを作っていたという歴史のある組合だそうです。
代表の山中さんは今年で63歳。トマト栽培歴30年のベテラン生産者です。以前は農器具メーカーの営業として働いていましたが、脱サラして家の農業を継いだそうです。
最初はイチゴとトマトを栽培していましたが、今はトマト一本にしぼっています。
「トマトは毎年が1年生。30年やっても毎年1年生ですね。」と山中さん。
「自然相手なので、去年が良かったから今年が良いという保証はどこにもないですね。多少なりとは何度か失敗して、トマトの事が解る様にはなってきたけれどもね。品種も変わってくるしね。日々勉強ですよ。」

柳川さん(左)と山中さん(右)

柳川さん(左)と山中さん(右)

副代表の柳川さんは今年で51歳。
大学を出て23歳で就農。トマトと、秋にほうれん草を栽培しているそうです。
「僕もまだまだ経験は少ない方ですよ。なにせ28回しかトマトを作っていないですからね。ベテランなんてとんでもない。やはり毎年1年生なんですよ。その気持ちを忘れるとやっぱり上手くいかなくなるんですよ。」
「大学は農水省の東京農業大学校に行っていました。実家は農業をやっていました。」
農業大学を出たという事は、ご実家を継ぐために行かれたんですよね? (mos)
「いや・・・別に継ぐつもりは無かったんですよ・・・。どちらかと言えば、農業はしたくなかったですね。」 と柳川さんからは意外な答え。
そんな気持ちの中で、大学を出てすぐに就農したのは何か思うところがあったんですか?(mos)
「親はまだまだ元気でしたけれども、親の気持ちとしてはね、いずれは自分達が出来なくなったときにやってくれたらいいわ、とほとんどの農家の親は考えているんですよ。サラリーマンになっても、自分には家の家業があるから・・・と中途半端な気持ちでサラリーマンをやっていてもダメでしょう。やるならどちらかにどっぷりのめり込んだ方がいいですからね。どっちかを選択しようと考えた時に、農業を選びましたね。」と柳川さんは語ります。

インタビューの様子

インタビューの様子

合場トマト組合の特徴を聞くと、「桃太郎トマトの自根栽培へのこだわり」という答えが返ってきました。
「ハウスって何年も同じ場所に固定しているでしょ?何年もトマトを作っていると、やっぱり連作障害って出てくるんですよ。結局は土の害なんですよ。作れなくなってくるから、根の強い台木を接木すれば、同じ土でも問題なく連続して作れる。でも台木を使うと、トマトの味にも影響は出てきますよ。」 と柳川さん
なるほど!自根栽培で作ったトマトは、桃太郎トマト本来の味が味わえるという事ですね?(mos)
「我々の地域は、自根栽培を続けていますが、水とか土とかに恵まれていたのか。それとも、我々の土づくりへの努力が良かったのか。間違っていない方向に何十年と来ていたと思うんですよね。それで、今でも接木をしなくても自根で作っていけるんですよ。」
スーパーなどに出回っているトマトってほとんどが台木を接木して作ったトマトですよね?(mos)
「そうですね。ほとんどの産地は接木栽培ですね。本当の桃太郎トマトを食べられる数少ない産地のひとつが、 ここ合場トマト組合という事になりますね。」と柳川さんは誇らしげに言われます。
本物の桃太郎がモスに出荷されている。モスで食べられる。自根栽培を継続する為に、普段から土づくりに努力されている生産者の皆さんの熱い思いに感動するモススタッフでした。

大きな桃太郎トマト 生ってます!

大きな桃太郎トマト 生ってます!

トマトを試食。旨い!

トマトを試食。旨い!

自根栽培の敵はやはり連作障害、それを防ぐための努力とは? とモススタッフが聞くと・・・。
「それはやっぱり土づくりやろな。これが一番大変やと思う。」と山中さん。
「毎年、ただ作るだけでは土地は痩せて行く。それを保とうと思ったらそれだけの努力をせんと毎年同じようなトマトは作れませんね。」
土づくりとは?どのような事をやっているんですか?(mos)
「他の産地はどうかしらんが、うちうらは、トマトの樹をトラクターでカチこむんですわ。」
「カチこむ」??カチこむっていうのは??(mos)
「ああ…、収穫を終えたトマトの樹をトラクターで鋤きこむんですよ。収穫後の毎年7月の一番暑い時にやっています。以前は、トマトの樹を枯らしてから、ハウスの外に出して燃やしていたんですよ。僕の代から始めたんですが、トマトの樹を全部外に出すのもしんどいし、土に還した方がトマトの樹も栄養分になるんじゃないかな?と思ってやりだしたんですよ。」と山中さん。
「まあ有機物ですよね。それにプラスして、堆肥も土に入れています。結局土の力をつけて、肥料の持ちを良くするというのが狙いです。そのあとに、ハウスの中に水を張ります。 水を張るのが一番大事ですね。」 と柳川さん。
「トマトハウスに水を入れて田んぼ状態にする。その上にビニールを張って、ハウスを全部閉め切って、高温で消毒するんですね。悪い菌を全て死滅させるんですよ。まあええ菌もなんぼか死んでしまうけど・・・(笑)」と山中さん。

熱く語る山中さん

熱く語る山中さん

「トマトの畑に水を張る。というのは、熱を底の方まで伝えて行くというのが狙いなんですよ。表面は70℃くらいまで上がるけど、夜になると温度は下がりますよね。でも、水がある事で、熱が下がり難くなるから、殺菌効果が高まるわけです。あと、水がある事で、余分な肥料分を洗い流す効果もあります。田んぼに連作障害って無いでしょう?それと同じですね。」と柳川さん。
太陽熱消毒は、真夏に一ヵ月間くらいかけて行うそうです。その後は、かぶせたビニールを剥がして、
畝作りをして、9~11月頃までほうれん草を作るのだとか。次のトマトを植えるまで、約3カ月時間が開くので、その間は、ほうれん草を作っているそうです。
3カ月という短い期間ですが、これには実は重要な意味があります。
「ほうれん草の好きな肥料とトマトの好きな肥料は、別のものなんですよ。ほうれん草はトマトが吸い残した肥料を吸ってくれるという効果があります。」と柳川さん。
「うちは、ほうれん草を作る時は、新しい肥料は一切入れないですね。トマトの残肥のみですよ。」と山中さん。
「メインはトマトですから、出来るだけ余分な肥料を少なくして、次のトマト栽培に繋いでいこう。というような考えでやっているんですよ。」 と柳川さん。
我々には見えないこういった様々な下準備があって、モスのトマトを作られていることを改めて確認します。

柳川さんの語りも熱い!

柳川さんの語りも熱い!

そう言えば、合場トマト組合の畑には、トマトの樹の根元を覆っているマルチ(ビニール)が無い!
他のほとんどの産地は、ビニールのマルチを樹の根元に敷いています。
これは、何か大きな秘密があるのですか?(mos)
「いや・・・ただの経費節減ですね。(笑)」山中さん
「我々は、太陽熱消毒をするので、雑草が生えてこないのでマルチをする必要が無いんですよ。これだけでも、ビニール資材の節減に大きな効果があります。ハウスの上部を覆っているビニールも、3~4年交換しなくていいような耐久性のある素材を使ったりしています。普通のビニールより高いけど、交換する手間も省けるし、廃棄物も少なくなるから環境にも優しいですしね。」よかった、ちゃんと意味があるようです。

我々は『エコファーマー』という認定を受けてトマトの栽培をしています。その認定条件の中には、化学肥料を極力控えて、有機質を主体に栽培するという条項があります。「今まで僕たちは、トマトも作ってきたし、土も作ってきた。」と柳川さんは語ります。
「それに加えて、化学農薬を出来るだけ少なくしてやっていこうという姿勢で取り組んでいます。環境防除という考え方で、出来るだけハウスの中を乾燥させて、病気を出し難くするんです。これで農薬は削減できます。 あと、うちは紫外線カットのフィルムをハウスに使う事で、虫がハウスの中に入り難くなる。虫は紫外線を感知しながら飛ぶので、虫がハウスの中に入ってくると目が見えないような状態になる。という生理を生かした防除方法です。トマトハウスの中は、支柱や紐など、プラスチック資材が意外と多いですから、紫外線カットフィルムを使えば、資材も長持ちして環境にも優しいですね。あとパートさんも日焼けしにくくなるから、受けもいいですよ。」と柳川さんは笑います。

トマトの畝にマルチ(ビニール)が無い!

トマトの畝にマルチ(ビニール)が無い!

山中代表とモススタッフの固い握手

山中代表とモススタッフの固い握手

最後に、お二人から、モスバーガーに来て頂けるお客さまへのメッセージを頂きました。

山中さん
「私たち生産者は、安心安全を第一にしています。安心して食べて頂けるトマト作りに頑張っておりますので、これからも宜しくお願い致します。」
柳川さん
「私たちも合場出荷組合として、自信をもってトマトを作っていますので、安心して食べて頂きたいなと思います。安心安全をいつもお届けしたいと思っています。」

自根栽培や太陽熱消毒など、出来るだけ自然のトマトの味を守ろうと努力する山中さんと柳川さんの美味しいトマト、是非モスバーガーでその味を確かめて下さい。

合場トマト出荷組合の全メンバーです。

合場トマト出荷組合の全メンバーです。

Text by Sato